第7話 父親
そして、ついに私は父を見つけました。彼は家のない人が大勢暮らす丘のすぐそばの酒場にいました。白髪が交じった髪の毛や髭が伸ばしたままで虫が付いています。身につけている物からして彼もまた浮浪者のようです。離れた場所にいても生ゴミが腐ったような嫌な匂いがします。父はお金を持っていないにも関わらず毎晩酒を飲んで暴れているらしく、酒場の店主と揉めていました。殴り合いの喧嘩にまで発展し、最後に父は店主と他の客に担がれて冷たい川の中へ投げ込まれました。私は彼を死なすわけには行きませんでした。流れて行く父を月の光だけで追いかけました。父は運良く水位の低いところで木の枝に捕まりました。私は手を差し伸べて、彼が川からあがるのを手伝いました。「悪いねお嬢ちゃん」と父は擦れた低い声で言いました。私の顔に月明かりが指したとき、父の醜い瞳は大きく開かれました。
「クロエ……!」
父が呟いたその女の名は私の母の名前でした。
「ええ、そうよ。私はクロエの娘。あなたを探していました。」
父は何かを言いたいようでしたが、先ほどの喧嘩と寒さで弱っており歯をガタガタと震わせるだけでした。
私は恋人が借りてくれる小屋に父を招き入れて、手厚く保護しました。体を洗い、怪我の手当てをして温かいスープを与えました。父をベッドで横に寝かせて酒瓶を手渡すとすっかり気が大きくなったのか父は私の手首を強く摑み、犯そうとしました。そんなことは予想済みです。私は隠し持っていた小型ナイフで彼の二の腕を切って素早く手首を解き、刃の先端を父の首元に当てました。私は父にどうして私が生れたのか、母の元を離れたのはなぜか聞きました。父は大声で笑いました。
「偶然立ち寄った店でクロエが給仕をしていた。可愛い女だと思って閉店後レイプしてやったんだ。そして一発命中、お前ができちまった。俺は餓鬼が嫌いだから腹を殴ってやったよ。だから死んだと思っていた。まさかこんなクロエそっくりの良い女がやってくるとは思いもしなかった。あれから何年経った。クロエはもうババアだろうからお前とヤる。父親の愛ってやつよ。」
父の告白はおおよそ予想通りでした。私は父と交渉しました。父の今後の面倒は全て私が見る代わりに時が来たら協力してほしいと。彼は酒とセックスにしか興味がなさそうでした。期待なんて鼻からしていませんでしたが、実父がこんな男で幻滅しました。しかし、母を苦しめる最大の道具を手に入れたと言っても過言ではありません。私は興奮と肉欲に任せて、父に抱かれました。
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