言葉足らず

翌日の朝。休むとは言ったものの、さすがに何も手も打たないわけにはいかないので、寝る前に連絡をしていたスペシャルな助っ人を迎えに行くための準備をしていると、先に起きてリビングで朝食を食べていた妹の千尋がにやにやとした笑みを浮かべて

「お兄ちゃん今日休みなのに早いね。デートにでもいくの?」


僕は、またいつものいじりが始まったと思いつつ、着替える手を止めて

「仮にデートに行くとして、全身ジャージで行くような胆力は僕にはないよ」


「それもそっかー、それでお兄ちゃん結局どこ行くのー?」


「ちょっと雪乃の家にね。」


「やっぱりでデートじゃん!!」


少しオーバーなリアクションをしている妹をしり目に、約束の時間に差し迫っていたためそそくさと家を出た。


雪乃の家まではあまり距離が離れていないため、身体を温める目的もかねてダッシュして向かう。朝の心地よい風をもう少し体感していたかったが、たいして距離もないためすぐ雪乃の家の前まで到着した時、玄関ドアが開く音がした。


「おはよー!今日は寝坊しなかったみたいでよかった」


「おはよ雪乃。流石に前日いきなり誘ったのに寝坊はできないよ。」


声の主は今日のスペシャル助っ人の雪乃だった。今日誘った理由としては、今日から楓ちゃんを大会まで指導するわけだが、僕は仲間内で少しアドバイスし合う程度の経験しかなく、伝える能力に特段長けているわけではない。その点雪乃は、後輩からなどアドバイスを求められた際に、的確な指摘をわかりやすく伝える場面をよく目にしていたため陸上競技初心者の楓ちゃんにうってつけというわけだ。


ということはさておき、一つ気になることがある。それは雪乃が凄くおしゃれだったことだ。今まではどちらかというと、ストリート系のファッションを好んできているといった印象があったが、今日は一転純白のワンピースを着ていて、可愛いなかにも同年代の女子よりも大人っぽく見える雪乃がいつも以上に輝いて見えた。


「なんか今日の雪乃きれいだね!」

僕は、そう自然に言葉が出ていた。それくらいに魅力的だった。ただなぜ今日なのかという疑問は残るが、、、


「なんかいつもはきれいじゃないみたいじゃん!でもホントに、、、すごく嬉しい」

僕の言葉を聞いて雪乃は少し照れたようなしぐさを見せながらそう言った。微笑んだ表情に少しドキッとしたのは秘密だ。


雪乃は照れたのを隠すように、少し食い気味に

「早く行こ!昨日連絡来てからずっと楽しみにしてたし!」


僕は、冷や汗が首筋を通るのを感じた。もしかしたら、昨日雪乃に送ったメッセージの中に重大な間違いがあったのではないかという可能性に。僕は恐る恐る問いかけてみる。

「もしかして今日は遊びに行くと、、思ってたりする、、?」


「?だって昨日メッセージで「明日空いてたりする?どうしても来てほしくて!」て言ってたじゃん!この前の埋め合わせで遊びに行くんじゃないの?」


昨日の夜、僕はなぜあんなに勢い任せのメッセージを送ってしまったのかと後悔した。取り敢えず困ったら雪乃だのみ!というのが今回はかなり裏目になってしまった。僕は、今回の楓ちゃんの件を正直に伝える


「それが、今日は遊びに行くんじゃなくて、、、」


「なくて?」


「、、10歳の女の子を一緒に指導してほしくて」


「、、、、、、、、、は?」


なんかデジャブだ。

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ロリっ子かけっこ 鵜飼 春 @omamesann

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