じとめ行進曲

とんぺて

第1話じとめ行進曲

世界の終わりというものは

必ずしも来るものではありません

要は馬鹿が馬鹿な事をした

結果なのです


いくらなら子供売ってくれますか

間違いですか

欲しいのです

欲しいのです


最後にあいつの顔、ぶん殴ってみたら

どうですかね

はあ、止まれなくなると。わかりました

先輩、ご退職おめでとうございます


大人は羊水に浸かれません

産まれたら、もう生きるしかありません

只叶うなら

くるまって眠りたいです


気持ち悪いと言ってみる

鏡に向かってもう一度

目の前の自分に期待しないように

正しいと思わないように


やっぱりなと言って別れました

甘いもので五千円だなんてとおもってたけど

三越は私がいていい場所じゃないと思ってたけど

買えるもんだな


結婚しないの?と聞かれる度

店員に特大パイを頼むことにしてます

太るよガハハと笑うあなたに

逃げないの?と返します


煙にむせて、鼻水がこぼれたけど

早く慣らしたい

どうせ独りなら

ベランダで煙草に火を点けたい


45ℓは止めときな

90位が丁度いい

どうしようもない奴だったから

置き忘れもどうしようもないもんだからね


くぎ打ちますか

顔にくぎ打って、カナヅチで叩きましょう

憎くありません、憎くありません

うばいやがって、憎くありません


針の先が指に刺さり

点のような傷から血が落ちてきました

机に落ちていくのを

じっと見ていました


しわくちゃの私を見て

窓向こうで悲鳴をあげている私がいる

こんなの私じゃないって。つれないわね

あらカーテン閉めてくれるの?ありがとう


振り返っても何も無いのですもの

これからどう歩んでも何も残さないのでしょう

ほら、期待されない、馬鹿にされない

もう言ってくる人もいない


「おら深海魚だろ。陸上がんなや」

人魚姫とはえれぇ違いです

このまま戻っても何があるのでしょう

深く、真っ暗です


線路が途中で切れた

ジェットコースターあるでしょう?

一人ぽつんと最前列に座ってる人

あれね、私です


あ、好きになってくれるんですか

じゃあ、愛してます

あ、好きな人できたんですか

じゃあ、バイバイですね


いつもありがとう?

何いってるの、こちらこそよ。

いつも別なとこで女つくるから

煮込みが上手くなったもの


だから

ペンを刺しました

謝ったから、受け入れて

目にぶっ刺すだけで許しました


言ったもん勝ちよ

「良い人生だった」

やったもん勝ち

にぃと笑って目を閉じる


未来人になって

酒も、女も男も、金も、あと社会も

大して変わらないけど

人を上手に傷付けられるようになったよ


ふっと怖くなる日は

スーツを着るのもおっくうで

親から貰った金で

何かに使いました


必要だから食べるのです

口の中は血で真っ赤っか。でも食べて

お腹一杯になって幸せにならなくちゃ

だってそうでしょ


私の遺体はコンドルにでも食べさせな

っとしたり顔で言ったけど

何で家族旅行チベットなの

ガイドさんちらちらとこっち見てるよ


手首切ると血が出ます

当たり前のことなのに

切るまで知りませんでした

どくどくとちゃんと流れてます


壊れちゃったか、買い替えなきゃ

あなたニッパーしまって

でも今月厳しいし、どうしよう

あなたショットガンしまって


真っ白い肌

ブロンド、スラリとした体

憧れの外国の人

私は、なれない


殺意と共に

長いツメが咲き乱れる

ニャン公、許せ

お前のお腹がいけないんだ


ホットケーキ、丸いの二つ重ねただけ

薄っぺらいバターが頭に乗っかっている

久々に食べに来たら

知らない子になっていた


ようやく片が付きました

全部捨てるのは気持ちがいいですね

さて

後は私だけですね


泣くな

泣くんじゃねえ

どんなに泣こうが

お前の推しはあの娘と結婚したんだ


水音に気づいた時

底にいるのが動いたとわかりました

泡が大きくなるのを

逃げずに今度は待ちます


人があなたを忘れないために

すべき事は

与えるのではありません

傷を抉るのです


家族をみると

ああ、くっついてる、て感じです

離れられず、ぎとぎとと、臭いんです

あなたのはいいわよね


自分の人生に諦めがつく

ついでに部屋を片付けよう

友達も家族も捨てて

良い日です


それが薬になったのは何時からでしょうか

只の暇つぶしが

大切な何かになったのは

本当は要らないのですよ?


弱くなると、人を好きになります

風邪には蜂蜜です

熱い白湯に垂らして飲むと

胸がほっこりしやす


明日、目が覚めたら

どうか、戻ってくれますように

お弁当にいっぱい美味しいもの入れたから

おはよう、と寝ぼすけが帰ってきますように


一度、血を全部抜けば

これの血も流れないのだろうか

いらない、いらない、汚い

いらない、いらない、助けて


吐けば、元通り

間違いでした

正しくありませんでした

指を口に入れる


あと何年生きれば

この不安は終わるのでしょう

夜を迎えるたび

薬を飲まなきゃいけなくなりました


深夜、散歩します

音楽流して歩くと

知らない真っ暗な道を見つけました

どこに行くかもわからない真っ暗な道でした


やっと見つかったときは

泣いて笑いました

大きな口を開けて、腹を抱えて

ぼろぼろ泣きました


ただ年を重ねれば

そりゃ、腐っていきます

漬物になるか、ゴミ箱に行くか

よぅい、ドンと


友達も、家族も

恋人も、素敵な人生も

作れなかったなぁ。それなのに

笑っちゃって。お疲れ、もう


ちやほやされた夏が終わり

涼しい秋には押し入れにポイ

秋の扇たぁ

この私よ


盆の線香に夏を想う

まぶたを閉じれば

夏休みを無駄に過ごす私がいる

こら、今の内にありがと言っとけ


産んでくれてありがとう

なんて言えるわけねえじゃねぇか

おい、お袋

外行くけど買うもんあるかよ


あの子のお墓がどうしても欲しいの

光も見ることなく、天国に行っちゃったけど

私をママにしてくれたあの子を

どうしても忘れたくないの


私について語ることはないけれど

貴方の浮気相手についてなら

少し、自信あるわよ

聞きたい?


「ねえ、どうして世界はこんなにきれいなの?」

「それはあなたの目が誰よりも澄んでるからよ」

母親はそう言うと眼を閉じた

子供は不思議そうに首をかしげた


皆、白いパンになりたいけれど

誰もジャムやチーズになりたいと思わない

私こそが主人公なのだと

味気ないパンをほおばる


カワイイ服を着た私を埋めましょう

ぬいぐるみを抱きしめる私に砂をかけましょう

見えなくなれば、私は大人です

もう大丈夫です。普通です


午前二時に電話のベルが鳴った。友人が亡くなった

三時に又鳴る。友人からだった

「お前、死んだんじゃねえのか」

「いやそうだけど、思ったよりヒマでさ」


酔うとあの人はピアノを弾く

めちゃくちゃで、呂律が回らない指さばき

こっちに振り向くと

私の好きな曲を弾いてくれた


シャンゼリゼ通りを見下ろし

輝く街並みにうっとりと

高級ホテルで、味噌汁を飲みます

うん、セ ボン。


ああ、ちくしょう

ギュッとさせなさいよ

見ててまどろっこしい

あたしゃ、好きだよ。アンタを、よっと


後は死ぬだけなのに、まだ踊りたがっています

踊りきる前に終わるのでしょうか

足が折れて、引きずりながら地に伏せるのでしょうか

ああ、良かったと言えますように


クロックムッシュに一礼を

バレないようにコンロだけ点けて

パンからソースが垂れたら出来上り

こっそり大口開けて、ほおばる


貴方ぐらいですよ

こんなのを好きだと言う人

皆、気持ち悪がってますよ

でも貴方、それでも好きって言ってくれるんですね


…そうか、よく、言ってくれたな

気付けなくて、パパ、ごめんな?

でも良かった。言ってくれて。

大丈夫だ。もうあの学校に行かなくていい


精一杯泣きじゃくる私を

箪笥に入れて、鍵をかけました

今開けようにも、鍵はなく

呆然と泣き声を聞くしか無いのです


のっぺらぼうは私です

熱いタオルで顔を拭くと目も鼻も口も

みんな無くなっちゃって、鏡に写るは

のっぺらぼうなんです


ウィスキーが嫌いでした

父がいなくなった部屋は味気なく

机の上にあったウィスキーを一口

嫌いだった味が、今はむなしい


重ねた日は色となり

費やした時間は層になる

死をもって

あなたという作品は完成する


一句

そうですか

ああ、そうですか

そうですか


大人になるのは難しい

上司にコブラツイストかまして

帰り際、辞表を頭に叩きつけたけど

大人だったらどんな技掛けたんだろう


難しいことを言えば大人です

知らない単語、意味ありげな定型文

言葉を力として行使できれば

お前を叩き壊せるようになります


笑ってどこか行こうと言いました

そんなに顔ひどかった?と聞くと

玄関で振り向いて

おごりだぞぉと苦笑いしました


明日、私はもういません

庭の梅の木ですが

あなた、今年の梅酒頼みますよ

楽しみにしてますからね


年が経てば

腐るか、よく漬かったか、それだけになります

腐ったら仕方ありません

見捨てるしか無いのです


味噌汁の具を変えただけで

「縁起がいい」等と

とんちんかんな事を言うこの間抜けに

かばんを手渡した


ビリーホリディで好きなのは

スピーク ロウ

何がいいって

とても嫌そうに歌うのよね、彼女


二階の窓を覗くと

屋根に登って遊ぶ子どもがいた

「危ないよ」

遠くで海が広がっていた


大きい人に頭を撫でられた

この歳だし、恥ずかしいけれど

手が離れるまで、服を掴む私がいて

思わず笑いました。やっと涙が出ました


大時計の下で貴方を待ってる

頬杖ついて、大口開けてるけど

見かけたら

そちらに向かいます


神よ。どうして

たっぷりクリームのったアップルパイを

私に頬張らせたのですか

ダイエット中だって言ったでしょうが


もしもし

私です

いないですか

お幸せに。じゃ


もうカレンダーはいらないわ

予定なんて無いんだから

これから布団篭って、テレビ見てゲラゲラ笑うの

素敵でしょ


貴方の隣でカバディする私がいます

何やってんだろう波が来るたび

今日も雨だなと

下腹をつまみます


坂道を見下ろした先、水平線に向かって

街の明かりが広がります

墨一色の田園の隣に腰掛け

目を抑えている私にようやっと気づきました


何だ。何だ。お前びしょ濡れで

母さん!タオル!あと風呂!

おい、どうした?何があった?

泣くな。こら。とりあえず風呂入りなさい


おかしいわね。味がしない

おかしいと思い、試しに醤油を直に

飲んだんですが、吹き出しました

人生とは何か。ああ、まず辞めよう、仕事


パパはカッコイイし、父ちゃん優しいのに

あいつ、馬鹿にしたの

・・・ごめんなさい

泣かないで。ごめんなさい


そうよ。未来から来たの

このままじゃあのババアにこの傷付けられるから

こんなオバちゃんになったけど

あなたを幸せにしたかったの。うん、綺麗よ


ほう。泣きよるわ

フハハ。二時か。四半刻も経っておらぬわ

殿‼︎殿中でござる‼︎殿中でござるぞぉ‼︎

やだもー。助け


カリンシロップの入った瓶を開ける

去年フラれた時、ヤケで作りましたが

雨の日にお湯割にして頂くと

よく生きたと慰めてくれます


アイスピックは氷を割るものだなんて

知りませんでした

突き刺さすもんだとばっかり

いや、目ですよ。別れるときやりません?


あの子といっしょに卵焼き作って下さい

焦がしても形が悪くても

恥ずかしくありません

してください。私はできませんでした


いや、はっはっは。お先真っ暗ですわ!

この道歩くのぉ?

嫌だよ。俺、やだなぁ

どこで間違ったんだろうなぁ


西瓜を切ると、夏休みがやってくる

盆の暮れ、蝉の鳴き声

もう会えない人が

縁側で涼んでいる


生きなければいけないのでしょうか

そうですか。・・・私ですか?

疲れました

ただ、ただ、終わりたい


何か言わなくちゃ

期待されてるのだから何か面白いこと

駄目。又駄目。ああその目だ

もういいと言ってるその目だ


友人に抱きつかれました

振りほどこうとしても離れなくて

それが暖かったんです。寒くないのです

いつのまにか、何かが壊れました


今吐いてます

オレンジジュースを飲んで吐けば

のどが痛くならないという友人の言葉を

トイレの縁を掴みながら思い出しました


仕事終わったら、コーヒー飲む

たまの習慣が気づいたらいつもになった

飲んでぼんやり過ごす

苦いのに、たまに味がしなくなる


耳鳴りが鳴る夜は眠れない

ずっとこうやって眠るのだろうか

ジジジ・・と頭の中で響く

そのまま気絶するまで丸くなる


僕は在るが、意味はない

その日まで

只、生きて

ある日、プッツリ消えていく


銃?ヒケばタマ出るヨ!

ニッポンあまり見ないデショ?

デモ、売れルヨ

オクサンイイの買ったヨ!


クレーマー対策スプレーってどこですか?

あ、3番。害虫のとこ。どうも

お、けっこうあるある

へぇ、バルサンの新商品かぁ


だってそれもう只の糞袋だよ?

母さんはとっくに死んでんのよ

じゃ、替われよ。金やるから

金やるから、替われ、ずっと面倒見てよ


供物になろう

私を生贄に一つのカップルが出来上がる

目を閉じて、血を流しましょう

私は踏み台。それだけに生きた者


ある日鏡を見ると

知らないババアがいた

薄っぺらいシワだけが

顔に張り付いていた


「目的は?」

「観光ですね」

「そのメリケンサックは?」

「あの腐れ野郎を殴る為です」通れた


友人というより宗教団体の人

気紛れに魔女裁判を行う

良かった。私じゃなくて

あの子、学校変えるんだろうなぁ


友人の子どもが死んだそうです

あいつらはムショでご飯食ってんのか

「どうしたの?パパ?」

もうちょっと、ごめん、もう少しこのまま


ある日の朝、起きれなくなっていた

故障したとわかった

ケータイが鳴ってる。出れない

毛布にくるまる。消したい。動かない


強盗だ!夢と希望を出せ!

何?無い?嘘つけそんだけ若いのに

いや、待ってくれ、泣くな、辛かった?

落ち着いてくれ、頼む。お願いだから


いつまでも子どもで、親を探している

もういないのに声を出してずっと求めてる

あんなことされたのに

まだ愛してくれると思っている


パン一斤厚めにザクリ

表面焼き跡ついた香ばしいのを

塩気のあるバターと茹でたあずきを乗せ

あんぐりと口を開ける。おい、朝だ


娘はシュークリームは食べないらしい

子どもみたいで恥ずかしいって

そうか、僕はまぁいつも買い食いするよ

大人なんて飽きちゃったからね


軽く、軽く

魂を風船のように軽く

さっさと死ねるようにと

自分を撫でておく


近場の山で穴を掘る

これは画期的だと鼻を鳴らし

しばらく掘っていたが、結局夕方になって

涙目で穴を埋める羽目になった


五時の夕暮れに鐘が鳴った

扉を開けて手を振って帰ると

又鐘が鳴った

私は立ち止まり、トンネル先の海岸を見た


羊を盗んだって?

そりゃ殴られるに決まってる

明日引っ越すんだろ?

来いよ。酒でも飲もう


魔法瓶のフタ開ければ、熱い甘酒

プラットホームは雪に埋まってる

電車は竹に引っ掛かって遅れるとのこと

まだ降るのか。もう一口


おじさま。波の音がします

もうすぐ何も聞こえなくなります

それまでお話ししましょ

良い音を聞き、善き人に会えたのですから


10歳の私が跳ね上がり、親を呼び止めました

必死に泣いて、わかってくれて、又泣きます

寝室にいる私は成功したのを知り

笑いながら見えなくなりました


何故幸せなの?

子ども捨てて、何で笑っているの?

ずっと不幸でいて

私のためにずっと苦しんでよ


背中のネジを神様が巻いて何処かへ行った

やがて、動かなくなった時

私、神様もう一度巻いてって

誰もいない部屋でそう言ったんだ


ビデオに映る私は猿のようにしわくちゃで

その人は危なかっしく私を抱くと

ぼろぼろと涙をこぼした

もういないその人はお母さんだよと呟いた


パンケーキを食ってやる

何が何でも美味しいって笑って

くそみてえな今日一日を

ああ良かったと思わせてやる


人間、疲れます

ビタミン剤を飲み始めたのは

確か大人になった頃です

体から錆びた匂いがします


片想いは呪いです

ひどく夜にそれは襲ってきます

二学期が来るまで、何回私は

私を殺すんだろうか


語られるのは祖父のこと

生前はそんな風に見えなかったのに

ギャンブルで泣いたそうな

今亡き人がそこにいる


遠くに見える景色が

どうしようも無くむなしく

握ってくれるその手を見上げる私は

ひどくひどく嬉しそうだった


たった一人の深海魚は

みにくい顔で、這いつくばる

光を見たら目が潰れちまう

その空気は私にとって毒でしかないのだ


こんな体欲しいって言った?

どうしてそんな目で見られなきゃいけないの

「可哀想に」と逸らした目は

「次行こう」と嬉しげなくせに


持ち上げて裏返した先には

何もないというのがありまして

やがて酒が美味しく感じ始め

誰かと喧嘩することも無くなった


他の誰かになれば

みんな振り向いてくれる

すごいね、とその一言が

私を成りたい私にしてくれる


百の是が一を非とす

真の一を百の否が嘘と定め

十の誰かが九十を背に一を罵る

一が零になるまでそうやって続く


やりたい事はあるはずだ

君は素晴らしいのだから

ならばやりたい

お前をなぐりたい


明日首を吊るなら

何着ようかな

夜に苦しまない明日がくるならば

たった1日でも私の休日だ


大人になった私は

キャンディーを買わなくなった

不満気な小さい私の手を握って言う

ふふん、良いトコ教えたげる


雨の日に水たまりを踏むと

それは硫酸で

溶けていく体を見て

痛くないんだとホッとしました


女子力も極まれば

果てに見えるは原始人

男がマンモスとわかれば

ウホウホと媚びて槍を振り回す


気がついたら三十になって

鏡を見て振り返れば

四十になって

眼を開けたら母が泣いていた


笑っても嘘をつく

八時間笑って、八時間寝る

首をポキンと折ってゴミ箱へ

百均で又買わなきゃなぁ


もう拳で合コン制するしかないと思う

多分食事より準備に金がかかるから

欲しいのはもう獲るしかない

貴様等、そいつは私のだ。来るなら来い


あなたが報告した時

私はきっと笑った顔で迎えていた

ちゃんと幸せになって欲しいと思うし

駄目で又泣きついて欲しいと思う


私とはひとつの集合体で

経験が八割の私を占める

何十億の細胞と共に生きた私は

まだひとりぼっちが嫌らしい


最初に釣ったのは小ガニでした

それ以降はさっぱり釣れなかったようですが

後はあまり覚えてません

父の背中でよだれをたらしていたそうです


知れば知るほど嫌になる現実に

程良く慣れてきて

休日は寝るだけの社会人の私は

立派に夢を諦めた


目を閉じなさい

できないのら閉じさせてやろうか

もうちょい休みなさいな

最悪気絶させるから良いけど


ひどい夢を見た気がします

誰も私を見ない夢

皺だらけの私を見る人はみんな

優しく、あっさり通り過ぎる


ある日、大人になった

何故か強くなれなかった

憧れた立派な大人になれず

突然、ある日、大人になった


縁側で寝そべる父を起こそうとしても

まったく反応が無いのだから

押し潰そうと乗っかれば

縁側に鏡もちができあがった


暗いステージに一人立つ

控えめに歌う声は届くもんでも

意味があるわけでもない

誰もいない。ただ、唄う


命が平等なら

人間に生まれなきゃよかった

あんたなんか生まれなきゃ良かった

そんな戯言に傷つかないのだから


酔って望んで生きてきて

時間が経てば、帰らなきゃならん

あの家に

俺がいなくてもいい、あの家に


ノートがあって

開いては適当に書いて

たまに少し多めに、疲れては落書き書いて

最後のページに遺書を書く


私達は、ほら部品だから

一人じゃ意味が無いんだって

学校はそんな事教えないよ

使えなくなるもの


姉ちゃんだって。ほら包丁離して

あーあ。血ぃ出てるじゃない

帰るよ。離婚だ離婚

あんな奴、ちゃんと苦しめるから


思った以上に巨人になっていた

周りを見ても誰もいない

下に街があるから、動けない

強くなった。強くなっただけだった


だから言ったでしょ。苦いって

ミルク入れなさい

砂糖もほら

無理に大人にならなくていいのよ


つくづく私は

日本人で

アジア人で

平たい顔の民族です


後十年こうして生きる

時間を潰し、思い出にふける

お前がいないから

何だか疲れちゃってな


階段を下りると

キッチンに母がいた

「おはよう」と言ってくれたから

「おはよう」と前みたいに言えた


怨念という言葉のために

あのクズを呪いましょう

その言葉を忘れてはならない

辞書のために呪いましょ


椿の花を見ていると

私の顔が得意気にそこにあって

いつかポロリと落ちるのに

笑顔で私を罵っていた


炒めたナスをめんつゆに漬ける

かなとこ雲が向こうにいたので

こうしちゃいられんと

立ったまま、一つ急いで口に入れる


売れない本の作者

皆言わないけど、皆知っている

書いても、誰も見ない

産んでごめんねと一人頭を抱えた


工場で造った不良品を

捨てるたび

感情も無く捨てる私は

使える人間だと思いたい


貴方が勝手に

どこかに行くから

拾ってくるから

切り落としたくなる


本当に恐ろしいのは

ある日、フッと我に返り

望んだもの、欲しかったもの

一切思い出せなくなることです


中身開けたら

汚いものしかなかった

クズの子はクズなんだとわかって

後は時間をつぶすだけになった


将来どうするのって

将来死ぬよ?

いつでも死ねるから

自由なんじゃないの?


私が生きなくても

世界はちゃんと廻るし

仕事しなくても、誰かが廻す

世界がなくても地球は廻る


私が死んだら

困ってくれますように

私しかいなかったんだと

泣いてくれますように


大した甘い言葉達が

我こそはと闊歩する

私がそれらに興味が無くなったのは

私が見下ろせる奴を見つけたからだ


切り落とされたオッパイは

メスでざくりと切り落とされた

良かったね、の言葉の副音声が

もう女じゃないとあざ笑った


棚の上にクッキー箱があるから

ぴょんぴょん跳ねていたら

お母さんが呆れて

一枚だけよと口の中に入れた


娘が鉢植えを抱えて、よろよろしていた

あれほど少しずつ持って帰れと

クラクションを鳴らす

はいはい救世主よ


ガラスの器に削った氷をこんもりと

レモンシロップを垂らす

目の前の息子を見て

この子私の子供なんだと思った


延々と冷麦作り

夏が終わるまでお世話になります

孫が帰ったら

盆に戻るあいつがねだる


ぼろくそ泣いて

ちくしょうとのたうち回って

ファミレスでやけ食いして寝ると

次の日すっきりします。あ?体重?


1+1は2。

相手が1と言ったら必ず1と言う

他の数字を言ったらもう終わり

教室の隅に追いやられる


ひどくゾッとする

老い先短いのに

何一つ成せず

病院に行かなくちゃならない


家に勝手に入って

暴れる奴を人とは思わないこと

睨まず、悔しがらず

速やかにそこから追い出すこと


ドーナッツをゆっくり食べる

少し笑っとく

今日は窓向こうにいる私が

オールドファッションに初めて会う日


よく考えると

エイリアンが地球を見れば

人間にボロボロにされてるんだから

そりゃ、助けたくなるわな


割った花瓶の前で

母はずっとうずくまっていた

嘘をついた小さい私は

扉越しにその姿を見つめるしかなかった


冷めた目で

君は間違ってるとこんこんと諭す

夢中になって

泣くまで君はおかしいと言い続ける


プランターの中の地球が

黒い蟻で群がっていたものだから

ああもう無理だと

丸ごとゴミ箱に捨てた


かしこい私は

どんなに頑張っても

あの子の劣化版にしか

ならないのを知っている


ママだから

妻だから

ちゃんとしてって

知らない誰かが言った


ぽんと背中を押せば

校舎から落ちてしまいます

あなたが押したら

ぽんと良い音が鳴って


久しぶりに夕焼けを見ました

何十年も歩いた道で

親が夕焼けと教えてくれた

この空をやっと目にしました


少しひざを曲げて

おなかすいた?と聞いてみる

うなずいたら

美味しいものを作りましょう


夢が汚れるのが

嫌だから諦めました

でも

最後まで傍にいさせて下さい


ある日、戦争が始まった

気づいたら、テレビを見たら、始まった

コンビニが無くなるそうです

あ、終わるんだ


サバの冷汁にチョコミントアイス

作ってなんだが合わんだろ

ビール買わなきゃならん

帰ったらシャワー浴びんと


青春を過ぎた私達は

老害と呼ばれるようになった

当たり前がわからなくなり

とりあえず横にずらされる


70%が水で出来てるくせに

私は何だと考える

残り30%が私なんだろうか

それを無くせば水になれるのに


よく幸せになるために

人を嫌い、無視します

じゃないと

理性が私を殺しにきます


ゾンビになれば

上司食いちぎれるのか

でも不味そう。絶対不味い

生きよう。今こいつ倒そう


頭から出た糸を

ピーっと引っ張っると

やがて眠くなっていって

声も聞こえなくなった


鏡を覗くと

魂がひどく汚れていた

原因は寝不足なんだと

善悪云々じゃなく寝ろとのこと


同じ女性として

言わせてもらうけど

金属バットは

人に向けちゃダメよ


口から出たのは

下水道のにおいがしました

父のにおいです

結局何も変わりませんでした


必死に生きる人の瞳が

あまりにも輝いているのだから

現実はこうだと

何度も引きずり落とす


気づいたらあっという間で

苦しいときはやけに長い

酒を飲みます

ひどく強い酒を


一生女として

生きなきゃいけない

なんて

許してたまるものか


女以外に

男しかいないのだから

普通の愛は

やっぱりイかれていると思う


主人公が勝って

ヒロインが笑うのなら

私は読者を引きずり落とすしかない

私を見ろと殺すのだ


最後に母に化粧をする

眼を閉じて眠っているだけの母に

「出来たよ」と言った

もう笑ってくれなかった

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じとめ行進曲 とんぺて @kuruhachiyama

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