エピローグ&プロローグ

 照明がついて、明るくなった。

 目の前。

 恋人がいる。

「わたし」

 なみだで、上手く声が出せない。

「わた、わたしで、いいです、か」

 恋人。

「もちろん」

「うわあああ」

 恋人に走り寄った。

 それからは、よく覚えていない。

 マネージャの連絡で気が付いたときは、病院の待合室だった。

 講演は大成功だったらしい。

 松葉杖をついた恋人。

 診察室から出てくる。

「あっ、あの、えっと」

「さすがだよ。まさかあの状況でタックルされるなんて」

「ご、ごめんなさい」

 恋人に走り寄った後の記憶が無いのは、どうやら彼にタックルをぶちかましたから、らしい。

「わたしよくおぼえてなくて、えっと」

「いまから仕返しにあなたをちょっとだけ困らせますから、いいですか?」

 夫。

 キラキラした目。

 松葉杖を、手放した。

「あ、うわっ」

 夫が倒れそうになる。

 あわてて支えた。


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映写機と私 春嵐 @aiot3110

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