動き始めた時間

勝利だギューちゃん

第1話

「大丈夫?」

「うん」

「さあ、つかまって」

「・・・ありがと・・・」

差し出された手を握った・・・


とても、温かい・・・


ガタンゴトン


列車の音で目が覚める

「夢か・・・」

懐かしいような、最近のような、

そんな夢だった。


今さっきの夢とはいえ、鮮明に覚えていた。

手を差し伸べてくれたのは、女の子というのは覚えている。


でも、顔は思い出せなかった。


しばらくして、列車はある駅へと到着する。

僕が小学生の頃まで住んでいた村の最寄り駅。

卒業と同時に引っ越したので、5年ぶりになる。


今回、帰って来たのは、同窓会に参加するためだ。

あまり、のり気ではなかったが、親が勝手に、参加の返信をしてしまった。


なので、仕方なくということだ。


久しぶりのこの村は、憎たらしい程変わっていなかった。

多少は開発されていると思っていたが、5年前と全く変わっていない。


そこが腹ただしくもあり、ありがたくもあった。


同窓会の会場となるのは、母校である小学校。

駅からは、かなりの距離がある。


もともと貧弱ではあったが、都会の生活になれ、

より退化してしまった。


情けない限りだ。


学校への途中にある木陰で、休む事にした。

「もう、だめだ。歩けない」


そして、いつの間にか、眠りに落ちた。


気がつくと、僕のそばに人が立っていた。

女の子というのはわかった。

でも、逆光で顔は見えない。


でも、懐かしい匂いがした。


「大丈夫?」

「うん」

「立てる?ほらつかまって」

僕は差し出された手を握った。


とても、温かく、そして・・・やわらかい。


「ありがと・・・」

「気にしないで、さあ行こう!みんなが君を待ってる」


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動き始めた時間 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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