このレビューを書いた時点で、六話まで拝読しました。
異世界に通販サイトがあったらレビュー欄はどうなっているだろう? という着想がまず面白いんですが、それを一発ネタに終わらせずに、コンスタントに笑わせていくのがすごいですね。つよい。
話数が進んで行くにつれて、さりげなくレビュー者同士の関係性が見えてくる作りには「おおっ」っとなりました。
行間というか、書かれていないことに想いを馳せるのが楽しくて、ついつい読んでしまいます。
そういう「想像力を刺激して楽しませる」という点で、これはただのレビューの羅列ではなくて、まさしく小説なのだなぁと思いました。
今後の展開に期待しています。
様々な商品に対して並ぶ、評価の星とコピーとレビューの数々。
そんなどこの通販サイトでも見られる普遍的な光景も、
ファンタジーな世界のものとなればなんとも素っ頓狂なものに早変わり。
岩で梱包された聖剣、ヒールポーションの味事情、魔王様方の玉座評価……。
特にオススメは第四回の『ヴォスフォワールの魔書』
古びてきた商品に浴びせられる容赦のないレビューと
それはさておきお前ら誰なんだよ感が
なんともいえない『どこかで見た』風景過ぎるのだ。
そしてそんな言葉の端々から見える、
そこに生きる人々のリアルな生活や冒険の断片。
あるパーティのそれぞれの人々や旅立つ勇者とその友人の友情、各世界の魔王の心境。
それらは次第に見えない糸で結ばれて、言葉の向こうの冒険を描き出すのである。
ここにあるのは、まさにもう一つの世界の人々の生きざまそのものだ。
通販サイト、グルメ情報サイト、旅行サイト…様々なサイトに基本的な情報に加えて存在するもの、それがレビュー。カクヨムも御多分に漏れず、おすすめレビュー(今まさに読まれているコレです)が存在します。一部ではメインの情報ではなくレビューの方を目当てにネットの海を彷徨う人々もいるとかいないとか…好評、悪評、戯評に珍評、確かにそれ自体がコンテンツとなる場合もあるでしょう。
本作はまさにその「レビュー」を形にしたものです。本文無し、商品情報殆ど無し…あるのは商品名と値段、そしてそれに対するレビューのみ。「そんなものが面白いのか?」と思われるかもしれませんが、これが中々いけるもの。
本作で重要な点は、商品が"異世界の品"であるということ。聖剣、ポーション、呪いの玉座…それらに日本円で値が付けられているのです。ゲームの中で普通に売買した覚えがあっても、改めて日本円で、それもなんともありそうな値段になっていると、「おや?」と首を傾げる新鮮さがあることでしょう。
そして肝心要のメイン商品、購入者のレビューが、非常に"ありそう"なのです。見たような聞いたような調子で、異世界由来の商品について批評している文を読むと、日常と非日常の境界が揺らぐような、なんとも不思議な感覚に陥ります。
先程も書いた通り、読者が知れる商品情報は名前と値段のみ。後はレビューから推測するしかありません。あるレビューを読めばよさそうに思え、またあるレビューを読めば微妙に思え、中には商品以上に気になることが書かれ、そっちの方に気を取られてしまう…結局その商品が一体どんなものなのか、購入者がどんな世界に生きているのか、はっきりとしたことはわかりません。ですが、ひたすらに想像力を刺激される読み応えは、普通の小説では味わえないものであります。
長々と書いてしまいましたが一言で纏めますと、一風変わった面白さをお求めの皆様にオススメな作品です。きっと★をつけたくなると思いますよ。