第10話 「 」

検索のボタンをクリックしてからサイトが表示されるまでの0.3秒の間、あることが頭をよぎった。

もしかしたら、AAIはこれが目的なのではないか、と。

そんなことを思い浮かべていると、早速サイトのタイトルが目に入る。


「AAIの真実、か。しかし全くそのままのタイトルだよな。なんのひねりもなくストレートだな。」


とりあえずサイト全体を見渡すことにした。

前回見た時とあまり変わらない様子だったが、サイトの1番下辺りに一つだけ違う点があった。


「再入場者専用窓口...?これってもしかして詐欺られるやつとか?まったく馬鹿にしやがって、ワンクリ詐欺なら無視すりゃいいんだし、とりあえず入場してやろうかな」


クリックした指が少し重い。どうやら知らない間に緊張していたようだ。ロードが終わると、やっとスクロールができるようになった。


「なんだこれ、最初のページと同じじゃん」


そこに表示されていたのは、何の変哲もない「AAIの真実」のサイトと同じ見た目をしているページだった。

違和感を感じた俺は、バックスペースキーを2回押して検索画面へ戻ろうとした。が、再ロードが終わって表示されたのは、またもや「AAIの真実」と大きくタイトルが貼られた先程のサイトだった。


「どうなってんだ?...くそ、ブラウザが閉じられない..」


怖くなってブラウザを消そうとしたが、消した瞬間にブラウザが開く。何度消しても無駄だった。


「そうだ、再起動...」


パソコンの電源を落とし、念の為に1度コンセントからプラグをさし直す。

しばらく経って、電源を入れ直すと、文字通りブラウザは消えていた。


「あれ...検索しても出てこない...」


キーワードに引っかかるものがひとつも無い。

まるでAAIに関する情報が全て何者かによって抜き取られたかのようだった。


なにかがおかしい。

もう一度検索するが、変わらずなにもヒットしない。


「なんか怖...」


取り敢えず今はパソコンから離れることにした。


「テレビでも見るか…」


忘れてはいけない。これはテレビでは無いことを。


「え...」


画面に映し出される「AAIの真実」の6文字が目に突き刺さる。

しかし画面にはノイズが走っていることから、電波が弱い事が容易にわかった。


「もしかしてハッキングされてるのか...?」


スマホでSNSアプリを開き、キーワード検索機能で検索してみると、やはり、関東の範囲内で何者かによる電子機器のハッキングが大規模に行われていた。


SNSに次々と流れてくる情報の中の多くには、「ハッカーが東京にいる」という趣旨の文章もあり、戦慄を覚えてネットワークに繋がるあらゆる機器をネットから遮断し、スマホだけはネットに繋がるようにした。


正解だった。


SNSのタイムラインを更新すると、ネットに繋がっていた多数の機器が不具合を起こしているそうだ。

気がつくと、タイムラインがやたら静かになっていた。


「おかしいな…タイムラインに投稿できないぞ...」


サービスが停止したのか、タイムラインを更新しようとしてもタイムアウトしてしまう。

異変を感じ、友人に電話をかけるが、コールが鳴りやまずに断念、加えてスマホからネットに繋げなくなっていた。


「まずいな…ついに俺もネットに繋がらなくなったぞ...」


時刻は昼の1時、意を決して外へ出ることにした。


「そういえば腹減ったな...」


この状況こそコンビニを利用すべきだが、ここは敢えて近所のラーメン屋へ立ち寄ることにした。


「らっしゃーい、おお、あんたか」

「いつもの、大盛りで」

「あいよ〜」


ここのラーメン屋とは長い付き合いだ。

もう3年以上は通っている。


「お客さんいないですね、どうしたのかな」

「さぁ? なんかココ最近客足が遠くてよぉ、今月は赤字になりそうだわ」


溜息をつく店主に同情するかのごとく俺の表情も暗くなる。


「日本、どうなるんでしょうかね」


さぁな、と空返事と同時にチャーシュー麺が机に置かれる。


「これがまた旨いんだよなぁ〜、いただきまーす」

「んなこと言ってもお通しとかでないぞぉ〜」


スープまで飲み干し、一息つくが、味がしなかった。


「ごちそうさまでした、また利用させていただきますね」

「いつもありがとうな」


店を出ると、少し散歩がしたくなり、自宅へ戻るルートを大きく外れて公園まで行くことにした。

公園へ向かう途中、公衆電話で電話をかけようとしている女性を見かけたが、困った様子だったことから、電話がかからないことと思えた。


「公衆電話でさえも使えないなんて、流石にやばいな」


公園には誰もいなかった。

ベンチへ腰を下ろし、しばらくの間目を閉じた。

様々な記憶が脳裏をよぎる。


「そういえば、AAIって初めはテロとか暴動起こしてたんだよな」


忘れてはいけない、AAIは人類そのものだということを。


「AAIの主導者って誰なんだろう…」


表では対AI集団として動いているが、裏では真反対のことが行われていてもおかしくないと思われる程の情報の少なさに苛立ちを覚えるが、よく考えてみると日本のAAIには様々な違和感を覚える。

「爆撃」と称し関東から人間を追い出し、戻ってみるとなにも変わっている様子がなく、テレビがAAI仕様のものになっていたことや、Kriptonと関係があることを証明するような仕様。

これは明らかにAAIからのメッセージであり、警告である。

でなければ裏で密かに計画が進行している。

否、既に計画は実行され、表面上の進行がこのようになっているだけと言う可能性もある。


「関東から人間を追い出さなければならなかった理由といったらテレビくらいしか...」


しかし、テレビを交換する程度なら、公にテレビの交換命令を出せば済む話だということは言うまでもなく、更に謎が深まった。

いくら考えても無駄だと思い、公園をあとにする。

俺は自宅へ戻ることにした。

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AIトピア シグエス @SIGES

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