第十話 神父の手記

教会の中に入ると、一人の美しいシスターが、神であろう銀の像に向かって祈りをささげていた。



「ここが魔王軍の残党の隠れ家になっていると聞いたのですが」



 俺はシスターに向かって、問いを投げかけた、シスターがいるということは神父のことを一番知っている可能性があるからだ。



「まぁ!確かに神父様は最近帰ってきてないのですが、今思えば様子がおかしかったんです」



「様子がおかしかった?」



 今の話を聞いてシスターが本当のことを言っているのならば、神父が魔王軍残党に成り代わっていたことは、ほぼ確定だろう。



「ええ、なんだかしゃべりかけてもはっきりしないし、なんだか何かにとりつかれたような感じで……」



 シスターは悲しい顏をし、今思えばと思うかのような顔をした。



俺はシスターを祈りの場に残した後、神父がいたであろう部屋に向かった。


「ここか」



 特に変化もない、小さな個室に、木でできている机、その上には聖書であろう本の横に崇拝しているであろう女神の白い像がおいてあった。


 ルークは躊躇なく机を漁る。すると机の中には一冊の古ぼけた赤い日記帖のようなものがあった。


「何かのヒントがつかめるかもしれん、読んでみるか、なになに、今日とある孤児を引き取った、これで七人目となる記念にこの日記をつけることにする、私は信者からのお布施で生活する身、七人の子供と三人のシスター、私が家族たちを養ってはいかねばならない」


「これは、神父の日記? 神父の他に、こんなに人がいたのか?」


 俺は少しこのシスターが一人しかいない現状との違いに違和感を覚えつつ、ルークはそのまま読み続ける。


「今日は道でボロボロになっていたシスターを一時的に預かることになった、なんでも遠くの地からはるばるやってきたらしい、ちょうど子供たちの世話をしてくれる人が必要だったのでちょうど良い……この日はこれで終わってるな、おそらく神父が人間を食うために育てさせていたんだろう」


 ルークの殺気がすこし上がったように、周りの空気は重くなる、それは俺たちの怒りという感情が呼応する原因にもなった。


「次の日だ……子供たちの一人がいなくなっていしまった、シスター曰く目を離した隙にいなくなってしまったらしい、けしからん、なんということだ、何のためにお前を拾ってやったというんだ……だと、自分が子供たちを食っていたと戦士団にばれて逃げ出したのか?」


 俺はルークのその発言におかしな発言が含まれていることに気づいた。


「だとしたらおかしくないか? なんで神父はあのシスターだけ残して出ていったんだ? 普通ならさっきのシスターもろとも殺すはずなんだが」


 ルークはその発言を聞き、軽く考えた後、何かに気づいたかのようにハッとし、ページを飛ばし最後のページを開いた。


「やはり……最後のページにはこう書いてある、どう考えてもおかしい、子供たち七人と三人のシスターがいなくなってしまった、あのシスターは化け物だった、私ももう殺されるかもしれない、もしこの手記を見つけたものがいたら、どうか気を付けてほしい、あなたのあったシスターは確実に人間ではない」


 ルークが読み終わると俺たちはぞっとするようにドアの外を見た。しかし気づいた時にはすでに遅く、目の前には気配を感じさせないように来たであろうシスターが不敵な笑みをして目の前に立っていた。


「あらあら、困った神父様ね、こんなものを書いていたなんて、やっぱり教会は焼いておくべきだったかしら」



「お前が残党の長か? 洗いざらい吐いてもらうぞ、敗北者が」


 ルークは剣をシスターに向かって突き立てる、しかしそこにシスター驚く様子もなく、ニタニタと笑っていた。



「防衛長のご子息でしたか、やれやれ私に敗北者などと……一番の隅に追いやられ、やることが都市の防衛なんて……あなたこそ一体今まで何回私たち魔王軍に敗北してきたのですか?」


 煽りと挑発、ルークの油断を誘っているとしか考えられない一言だったが、ルークは怒りに身を任せ剣を振るった。


「ルーク!よけろ!」


 氷の勇者、ロザリアが何かに気づいたように、ルークに警告をする。


「おそいですわよ」


 その瞬間、爆発のようなものが起き俺たちは全員建物の外に吹き飛ばされた、そこに見えた光景は、ボロボロになった俺たちと、シスターの姿であった。


「お初にお目にかかりますわ、わたくし魔王軍第66大隊の指揮を任されています、グレモリーと申します、この度人間どもに私の軍をボロボロにさせたうえ、このわたくしに致命傷を負わせるなどという万死に値することをされましたので、潜伏をして機会をうかがっていた次第でありますう」


 そこには人間のシスターの姿はなく、全身を灰色と呼べるような、色に変色をしており、目は今までのきれいなブルーとは打って変わって、真っ赤な恐ろしい色に変色をしていた、しかしこの中で最も変わっているといえるのは、人間サイズであろう大きな尻尾と、コウモリもような翼であろう。


「わたくしの能力、覚醒の魔弾をモロに食らって無事で済むわけがありません、さあさあ残りの方々も殺して差し上げますわあ」


 覚醒の魔弾が一体どんな能力なのか、そしてルーク以外で戦う手段を考えなければいけない……

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彼は破壊者となって勇者生活を満喫するようです 空真 冬人 @Fuyuhito777

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