エピローグ的後日談

気がついた時、そこは見知らぬベッドの上だった

首を左右に振り周囲を確認する

どうやら病院に担ぎ込まれたみたいだ

窓の外は暗く、夜であることが分かる


体を起こすと関節の節々が痛んだ


何でこんなに痛いんだ?

ケガなんてしてなかった筈なんだけど……


ただの霊力の使い過ぎの、言わば精神的過労だっただけのはず


思い出せ

何があったんだっけか


確か……

学校の七不思議を解明したら怨霊が現れて

その後対策を立てて怨霊と戦って

買ったん、だよな……

そんで、霊力の使い過ぎで倒れたから此処にいる

うん、節々の痛みは原因不明

アイツと戦った時に怪我らしい怪我はしてなかった

何度思い返してみても原因は分からない



てか、なんで怨霊なんかと戦ったんだ?

七不思議を調査したのは覚えてるけど

そもそも何で七不思議なんか調べ始めたんだ?

全然思い出せない……

なんか頭痛くなってきたな、寝よ

明日起きたら家族に聞いてみようかな

眼を瞑り眠りに入る






翌朝、眼が覚めると母さんが来ていた

俺「おはよ、母さん」

母「大地!?起きたの!?良かった!ほんとに…良かったぁ…」

母さんは目に涙を浮かべ喜んでいた

俺「えっと、心配かけたみたい?だね。ごめん」

母「心配したに決まってるでしょ!!一週間も目を覚まさないで!!このまま、ずっと、目を覚まさないんじゃかって……」

俺「え?一週間?そんなに……ほんと心配かけて、ごめんなさい」

母「でもいいのよ、こうして目が覚めたんだから」

俺「あ、そういえば」

母「それじゃ、お父さんたちに連絡してくるから」

俺「あ、うん、わかった」

後で聞けばいいかな


数分後、母さんが戻ってきた

母「お父さんも会社からすぐ来るって」

俺「そっか。仕事は大丈夫なのかな」

母「仕事よりも息子が大事に決まってるでしょ!」

俺「そっか……」

大事にされている

両親からすれば当たり前なのかも知れない

でも、俺からしたら不出来な息子をこんなにも大事にしてくれてるって

そう感じる

だから

俺「ありがとね、母さん」

母「当たり前よ、母親なんですから」

俺「あのさ母さん」

母「何?お腹空いた?」

俺「いや、俺って何で一週間も気失ってたのかなって」

母「病院の先生は過労って言ってたわ。無理して限界以上の霊力でも使ったの?」

俺「あー……多分そう、なんだけど」

母「無理しちゃダメって何度も言ってるでしょ」

俺「はい、ごめんなさい」

母「お父さんクルまで時間少しあるから、何か食べる物もらってくるわね」

母が廊下を歩く看護師を掴まえて話をする

すると、看護師は慌てて誰かに連絡をした

そして、何か母さんに注意していた

母「怒られちゃった」

俺「なんで?」

母「目が覚めたなら、直ぐに呼んで下さいって」

俺「あー、なるほど」

そりゃ、そうだよな

一週間も寝てた奴が起きたんだから当たり前か


その後医者が来て簡単な健診をした

ぶっ倒れた時に頭を打ったかもしれないからCTスキャンしたらしい

でも何も問題はなかったみたいだ

但し衰弱が酷く瀕死とまではいかないが近い状態だったらしい

そして記憶の問診で問題が起きた


医「何があったのか説明できるかな?」

俺「えーっと、ちょっと無理して……」

いや言えないよ!怨霊とドンパチやってぶっ倒れたました!なんてさ!

医「ふむ……他に何か気になる事はあるかな?」

俺「えっと、体は問題無いんですか?」

医「体力は相当落ちてるだろうから、リハビリは必要だよ。驚いた事に、それ以外は健康体そのものだ」

俺「そう、ですか」

医「他に何かあるかな?」

俺「ほんと問題無いんですよね?」

医「どうかしたのかい?どこか痛む?」

俺「倒れた日の事を思い出そうとすると頭痛が」

医「ふむ、念の為もう一度検査した方が良さそうだね。すぐに準備するから2時間ほど待機しててくれるかな」

俺「わかりました」

母「今は大丈夫なの?頭痛くない?」

俺「今は全然大丈夫。昨日の夜、一度目が覚めた時に思い出そうとしたんだけど…その時にちょっと痛くて」

母「何ともないといいんだけど……」


検査の結果は全くの異常なし!

良かった良かった

単純に一週間ぶりに目が覚めた影響かな

気にしてもしょうがないし、今は目の前の問題に取り掛かろう

赤点とった教科の補習は残念luckyな事に完全に出れないし、夏休みの宿題を終わらせてラノベでも読もっと!

確かあれの新刊が8月に出るから、それから家に積んであるやつも読まないと……



そして、リハビリと宿題漬けの入院生活を一週間過ごし退院した

勿論、退院後は本屋アニ○イトに直行し新刊を買って自宅へ

感覚的には一週間ぶり、実質二週間ぶりの自室へ帰ってきた

俺「帰ってきたーー!さーて、読書読書ラノベラノベっと!」

いざ、作品の世界へ!



趣味に没頭してると時間が経つの早く感じるよね!

あっと言う間に夏休みは終わった……

そういえば、遊びに出かけたりしてないな……

まぁ、いつも通りか



始業式、それは夏休みの終わりを告げる無慈悲な式典


宿題が終わってない生徒達が慌てふためく様子もある意味様式美なのだろう

俺はとっくに終わったがな!

教室について、クラスを眺める


なぜか涙が一筋流れた

情緒不安定かよ


自分の席に着くと仁が話かけてきた

仁「大丈夫なのか?」

俺「何が?」

仁「入院したんだろ?」

俺「なんで知ってるの?」

仁「お前に電話したら妹さんが出て教えてくれたんだよ」

俺「なるほど。勿論大丈夫だよ、健康体だってさ」

仁「そうか、なら良いんだけど」

俺「心配してくれてサンキューな」

仁「いや、元気ならいいんだ」

担任「おーい、席に着けー。まずは皆にお知らせがある」

生徒たちが少しザワつく

担任「えー、夏休みの間にクラスメイトの神崎蓮さんが転校した。急な事だったらしく手紙が学校に届いた。手紙にはお世話になりました、とだけ書かれていた。書類なんかも一式同封されていた。以上だ。連絡先が知りたい人は職員室まで来るように」

再び教室がザワつくが、大きく動揺した人はいなかった

かく言う俺もそんな人いたっけ?程度の認識だ

仁が何やら心配そうにコッチを見てきたけど、なんだろう?

ボッチが2人から1人になったって心配してくれたのかな

大丈夫!ボッチは何人いようとボッチだから!

親指を立てて大丈夫!と返しておく


放課後になり、やる事もないし帰り支度をする

仁「なぁ、神崎さんの事なんだけど」

俺「どうした?何かあったか?」

仁「……何も知らないのか?」

ん?何言ってんだ?

俺「知らないよ」

仁「そっか」

んん?何で俺が知ってるって思うんだ?

接点何て無かったのに

ま、いっか

帰ろーっと


支度を済ませ廊下に出ると、今度は軽音楽部の加藤さんが話しかけてきた

加藤「ねぇ、山本くん」

俺「何?」

加藤「神崎さんの事なんだけど」

俺「またか……俺は何も知らないよ」

加藤「そうなの?」

俺「ああ」

加藤「そっか、わかった。バイバイ」

加藤さんはすぐに立ち去った

多分部活に行くんだろう

俺は気を取り直して昇降口に向かう

下駄箱を開けると中に手紙が入っていた

ふっ、またイタズラか

中身は確認せずにカバンに押し込み靴に履き替える

クズ「ちょーーーーーーっと!!待ったぁーーー!!」

さ、帰ろ早く帰ろ

クズ「待てって言ってんでしょーが!!」

クズ先輩が全速力でタックルを決めてきた

俺「ぐぇっ……」

クズ「ちょっと面貸しなさい!」

俺「いってーな!何するんすか!」

クズ「だーかーら!聞きたい事あんの!面貸せっつってんの!」

言ってねーよ!

俺「拒否したら」

クズ「あんたのBLエロ同人をばら撒く」

俺「止めろ!んなヤバいモンばら撒くな!」

クズ「なら大人しく言うこと聞きなさい!」

俺「ちっ、しょーがねーな」

クズ先輩はやると言ったら確実にやる

それ故に先輩なのだ

仕方なくクズ先輩に着いて行く

着いたのはやはり漫研の部室だった

俺「それで?何すか?聞きたい事って」

クズ「蓮チャンの事に決まってんでしょ!」

俺「は?誰?」

クズ「ふざけてるの?神崎蓮チャンだよ!何でいきなり転校したの?理由くらい聞いてるでしょ?白状しなさい!!」

俺「はぁ?知らないって!何でみんな俺に聞くのさ!?」

クズ「アンタが一番蓮チャンと仲良かったからでしょ!!」

俺「はぁー?そんな訳ないだろ!俺には神崎さんとやらがどんな人だったのかも覚えてないのに!」

クズ「そういう冗談は良くないよ!いくら振られたからって逆恨みが過ぎるよ!」

俺「振られた!?俺が!?いつ!?告白すらしてないってのに!?」

クズ「…………は?」

俺「だから、告白なんてしてないって」

クズ「それ、どういう事よ?アンタ蓮チャンに惚れてたんでしょ!?」

俺「…………は?」

クズ「だからで七不思議解き明かしてたんでしょ?」

俺「2人?」

クズ「ねぇ?ほんとに覚えてないの?あんなに一生懸命だったのに?」

俺「……身に覚えがない」

クズ「どうしたの?おかしいよ、君」

俺「そんな事言われたって……本当に覚えてない、といか知らない話だ」

クズ「もういい、そんな薄情なやつだとは思わなかった。もう帰って」

俺「クズ、先輩?」

クズ「帰って!!」

クズ先輩は何であんなに怒ってたんだ?

一体何なんだよ……神崎蓮って誰だよ


よくわからないまま、月日は流れ……

クズ先輩が卒業した

あの後から一切話すことは無くそのまま、神崎蓮という人物についても聞くことはできなかった

しかし、俺はそれすら気にしてはいなかった


更に時間は経過し、俺自身が卒業する日がやってきた

卒業式が終わり

泣きながら別れを惜しむ集団から一歩引いた所で同級生を眺める


何であんなに泣くんだろうな……

死に別れる訳でもないのに……

会おうと思えば直ぐに会えるのにな……

ただ、思っても口には出さない

それ位の空気を読む事はできるようになった

俺も成長したんだ


泣く集団を眺めるのに飽きたから、一人校舎に入る

色々あった……特に2年の時にやった七不思議を解明した時は


最初は開かずの教室だっけか

元開かずの教室は新しいドアが付けられ、ただの倉庫になっていた

音楽室は……開いてないだろうな

理科準備室も……開いてないよな

あれ?

想い出の場所殆ど開いてないんじゃね?

…………あ、2ーA!

あそこなら開いてるだろ

行ってみるか


静かな校舎の中をのんびり歩く

こんなにのんびりと廊下を歩くの初めてかもしれないな

ゆっくり歩いても数分もかからず教室に到着する

思った通り鍵は開いていてすんなりとドアが開く

そこは当たり前だが、ごく普通の教室だ

あの頃自分が座っていた席に座る


懐かしいな……

ここであの怨霊のベルンだったか?を封印したんだよな

思い出に浸っていると不穏な気配が近くに感じられた

何かいる……?

??「久しぶりだナァーー!ニンゲン!!」

俺「誰だ!?」

??「忘れたトハァ!言わせネーゾ!!忌々シイ封印シヤガッテ!!」

俺「お前、ベルンか!?」

ベルン「思い出したミテーダナァ!この封印解きヤガレ!!」

俺「ヤなこった!一生そこで消えてろ!」

ベルン「クソガ!アノ悪魔の娘をのオマエの感情は美味かったのにヨォ!!もう一度食わセロー!!」

俺「殺した?悪魔の、娘……?」

ベルン「何ダァ?オマエ、忘れちまったノカ!?ヒデー奴!!アノ時は自分の命よりも大事に思ってたのにヨーー!!ハハハハハハッ!!」

俺「何のこと、だ?お前は何を言って……」

ベルン「ン〜?オマエまさか、記憶を奪われたノカ?……ザマァ!!利用サレテ用が済んだらポイッテカァ!?アレは生粋の悪魔だナァ!」

俺「悪魔悪魔って一体誰の事言って」

ベルン「チクショ……モウ時間切レカ……何時カ抜ケ出シテ復讐シテヤルカラナ!!」

ベルンは結界の効果で消滅した


俺は……何を忘れてるんだ?

いや、奪われたのか?

何を?一体何の記憶を奪われたんだ……?

分からない!

分からない!分からない!

分からない!分からない!分からない!


俺から記憶を奪った?悪魔が?何の為に?




俺「ゔっ……頭が……」

酷い頭痛が大地を襲う

俺「この頭痛……病院で目を覚ました時と同じ?」

くそっ、なんだってんだよ!

何か引っ掛かる……

モヤモヤした引っ掛かりが、気になってしょうがない

なんだ?何が気になってるんだ?


思い出せ!何でも良い!記憶を奪った悪魔と関連しそうな事を!

もしアイツの言ってることが本当なら、俺は悪魔に協力した事になる

でも、そんなのありえない

俺は退魔師だ。悪魔や悪霊を祓う側だ

なのに何で……



頭痛と闘いながら必死に考える










あ、もしかして……








神崎蓮、か?

もし、この過程が合っているなら……

確かに俺は悪魔に利用さ協力させられた事も説明がつく

でも、ホントにこんな事ってあるのか?


仮定1…神崎蓮は悪魔だった

仮定2…その悪魔神崎蓮に俺は好意を抱いていた

仮定3…そして、悪魔は転校し消え


あの時、仁は神崎蓮について聞いてきた

その後、加藤さんも同じように聞いてきた


そしてクズ先輩

俺が神崎蓮を好きだった、なのに何も覚えていない事に怒った


でも……なんで悪魔は俺から記憶を奪った?

その必要はなかったはず……


そして都合の良い妄想が思いつく

いや、コレは無い!ありえない!

悪魔のクセに俺を……

俺を失恋で悲しませない為に記憶を奪うなんて!!

でも……でも!!

何かを奪う悪魔が俺から記憶を奪ったのが事実なら?

奪ったのが記憶だけじゃなく、生命力もだったなら?

一週間も意識不明だったことも説明がつくんじゃないのか?

仮定に仮定を重ねた推測ですらないようなこんな妄想……

真実なら……俺は……とても大事なモノを奪われた事になる、のか

でも、全ては推測以下の妄想の産物だ


俺「神崎 蓮、か……」

神崎蓮……かんざきれん……カンザキレン……

カン……ザキ……レン……?

なん、だ?何か、思い、出せ、そうだ……!

俺「ゔっ……」

頭痛がより一層酷くなる

ルカン?

なんだルカンって?聞いたこと無いはずなのに……

でも凄く大切なものな気がする……

ルカン…ルカン…ルカン・ザック……ファーレン!!??

ルカン・Zザック・ファーレン!?

なんだ?名前、なのか?

俺「ルカン・Z・ファーレン……」

一際鋭い痛みが頭を貫く

俺「ゔがぁーーーーーー!!…………はぁはぁはぁ」

思い出した……

そうだ、レンだ

俺が恋した悪魔少女の名前はっ!!


全部!全部思い出した取り戻した!!


なんで……そんな事したんだよ、レン

俺から自分自身の記憶を消して無かった事にするなんて


思い出したからと言って何が出来るわけでもない……

でも、コレは二度と忘れて奪われてなるものか!

俺が恋したのはいつもいつもいつも机に突っ伏して惰眠を貪る、そんな少女だ

超が付くほどの惰眠系ヒロイン

人間の時の名前は神崎蓮、そして悪魔本来の名前はルカン・Z・ファーレン

愛称はレン

俺が悲しまないように記憶を奪い消えた……心優しい、簒奪の悪魔


俺が愛した悪魔美少女だ!!




そして、山本大地の人生はこの後も続いていく

愛する悪魔少女に『生きて』と願われたから

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超惰眠系ヒロインを攻略したい もえすとろ @moestro

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