7ー4 幸せと悲しみと 後編

神崎さんもといレンは

死体も何も残らず全て黒いモヤになって消えてしまった

ベルン「美味いナァ!お前の不幸の味は最高ダナ!サ〜テ、オレっちはまた眠りにつくとするカナ。次の召喚者が現れるその時マデ」

俺「……待てよ」

ベルン「アァ?何か言ったカ?」

俺「待てっつったんだよ」

ベルン「ハッ!人間如きガ」

俺「お前は絶対に許さない!この世から消滅させてやる!」

ベルン「ハァ?そんな事できるワケないダロォ!オレっちは不滅なんダヨ!」

俺「知ってるか?オタクってのは普段は温厚な性格だが、キレるとおっかねーんだぞ」

ベルン「知るカヨ!人間如きに何かデキル?」

俺「かかって来いよ、下等な怨霊が」

ベルン「下等、ダト?フザケた事ぬかすなニンゲンガ!」

鎌を振りかぶるベルンに対して俺は術を込めた札で対応する

俺「術付『霊力防御』発動」

使い捨てのお札を用意した甲斐があった

お札の力で鎌は強く弾かれる

ベルン「ナニィ!?キサマ何者ダァ!」

俺「失恋したての男子高校生だよ!チクショウが!」

ベルン「フザケルナァ!!」

俺「術付『空間遮断結界』発動」

ベルン「囲ったノカ?この部屋を!」

俺「そうだよ、クソ野郎が!これでお前と二人っきりだ!」

ベルン「たかが人間一人になにがデキル?さっきから攻撃してコナイ弱者ガ!」

俺「流石に誰か来たら不味いからな」

ベルン「ナニを言ってイル?この結界程度簡単にコワセル!」

鎌を大きく振りかぶって床を攻撃する

しかし、結界は壊れなかった

ベルン「ナゼだ!ナゼだコワレナイ!?」

俺「俺って結界とか得意なんだよ」

ベルン「フン、ならばオマエを直接攻撃するでダ!オマエが力尽きれば結界もトケル!」

ベルンの鎌が俺に振り下ろされる

俺「術付『霊力防御』連続発動!」

バリン!バリン!バリン!と連続で防御結界が鎌を弾きながら破れ散る

ベルン「マダマダァ!」

さらにベルンは鎌を乱暴に振るう

三度鎌が振るわれる事でとうとう俺に鎌の先端が掠る

ベルン「ソロソロ限界カ?人間」

俺「そうだな、そろそろタイムリミットだ」

ベルン「ココで力尽きろ人間!!」

俺「術付」

ベルン「ソノ手ハ見飽キタゾ人間!」

俺「『攻撃減衰結界』発動!対象は怨霊ベルン!」

鎌が俺の肩に当たる

ベルン「ヤッタ」

俺「残念だったな」

鎌は確かに俺に当たった

しかし、威力は軽く叩かれる程度に減衰していた

ベルン「何ヲシタ!ニンゲン!」

俺「教えるわけないだろ?jk常識的に考えて

ベルンはもう一度鎌を振りかぶる

それでもダメージは発生しない

『攻撃減衰結界』は、相手の攻撃回数に応じて相手の攻撃威力が減衰するだ高等術符

威力が高すぎる攻撃は減衰しきれない欠点もあるが、今回は上手くいったようだ

俺「仕上げといこうか下等霊。術付『霧散式捕縛結界』発動!対象怨霊ベルン」

お札から黒い鎖が無数に伸びる

鎖はベルンを捕らえ縛り上げる

ベルン「ナンダコレハ!外レロ!外レロォ!!」

ベルンを縛る鎖が白く光り始める

ベルン「ナニヲシタ!ニンゲン!チカラガ、チカラがヌケテイク……」

俺「その鎖は捕縛対象の霊力を吸い取り空間に霧散させる対悪霊用の術だ」

ベルン「コンナモノォ!!」

俺「外れねーよ。ソレは俺の自信作だ。そして次に使うのは特別製の永続型術付だ」

ベルン「ナニヲスル気ダ!?」

俺「術付『検知式消滅封印結界』発動!!対象怨霊ベルン」

ベルンをピラミッド型の結界が覆う

ベルン「ダセ!ココカラ出セ!」

俺「もう二度とお前に自由はない」

ベルンがどんどん小さくなり結界も一緒に縮小する

俺「その結界はお前が再発生した時もお前を検知して自動的に捕らえる仕組みだ」

ベルン「ヤメロ!ヤメロ!ヤメロオオォォ!!消エタクナ……」

ベルンを捕らえた結界はベルン共々消滅した

終わった……何もかも全て、終わってしまった


俺「レン!!なんで!なんで死を選んだ!他にも選択肢があっただろ!なんで取り返しのつかない死を選んだんだよ!」

一人ぼっちの教室に虚しく俺の声だけが響く

すでに限界を超えて術付を使用していた為、意識が朦朧とする

怒りを原動力に気を張っていた反動で意識を失うのも時間の問題だった

レン(凄い力だね、大地)

俺「レン?レンなのか?どこにいるんだ?」

レンの声が聞こえた気がした

レン(最後にお礼をしたくて)

聞こえる!確かに聞こえる!

俺「まだ、消えてなかったんだ!すぐに復活の方法を」

レン(復活はしないわ。これはただの残留思念、その残りカスみたいなモノだから)

俺「でも!何か方法が」

レン(ありがとうね、こんな私を愛してくれて)

俺「今も!これからもずっと!愛してるから!だから戻ってきて」

レン(愛の告白なんて何百年ぶりかしらね。くすぐったいわ)

俺「何百、年」

レン(そう、実は私って凄い年寄りなのよ?幻滅した?)

俺「いいや!そんなの関係ない!」

レン(優しいのね、そういう所大好きよ)

俺「初めて好きって言ってくれた」

レン(そうだったかしら?なら改めて言ってあげる、簒奪の悪魔ファーレンが一番愛した人間はアナタよ、山本大地)

俺「なら、なんで……なんで死んじゃうんだよ!」

レン(ごめんなさい……でも、こうするしかなかったの。アナタの死を見届けるなんて、私にはできない)

俺「俺の死を」

レン(私にとって人間の寿命なんてあっと言う間に終わってしまうの)

俺「そんな……そんなのどうしようも無いじゃんか!」

レン(そう、だから私の死もどうしようもないのよ)

俺「そんなのっ……」

レン(私ね、昔親友を殺したの。この手でその娘の命を奪ったの。ずっとずっと後悔してた。贖罪の為に生きてきた。けど、もう終わりにしたの。大地のおかげで終わりできるの)

俺「俺のせいで?俺のせいでレンは……死んだ?」

レン(違うわ。大地のおかげて私はもう悲しまなくてすむの。もう悲しみだらけの生はイヤなのよ。生きていても活きてないこんな生に価値はないわ)

俺「自分勝手ににも程があるよ」

レン(あら?私は悪魔よ。基本的に悪魔ってそういうものよ、知ってるでしょ?)

俺「…………」

涙を堪え必死にレンを救う方法を考え続ける

でも、どんなに考えてもいい方法が見つからない

レン(もうそろそろ時間みたい)

俺「待って!」

レン(アナタと過ごした数カ月は最高に楽しかったわ。最期がこんなに楽しかったから私は笑顔で逝けるわ。ありがとう、大地)

俺「待ってよ!まだ話したい事、たくさん、ある…のに」

レン(顔を上げて、大地。最期にアナタの笑顔が見たいわ)

俺「笑顔になんて、なれないよ」

涙は止めどなく溢れ、消失感、無力感に苛まれる

レン(残念だわ、最期にアナタの笑顔見たかったのに。……私から餞別よ。そのまま目を閉じて)

目を閉じるも何も涙で何も見えやしない状態だ

そっと、チュッと唇に何かが触れる感触があった

俺「……!?」

レン(私の……ファーストキスよ。それじゃバイバイ)

手を伸ばし何もない空間を掴む

そこには空気しかない

この時、レンはこの世から完全に消失したのだった…………


俺はそのまま意識か遠のき教室の硬い床に倒れた

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る