7ー4 幸せと悲しみと 前編

放課後、クラスメイト達は足早に帰宅する

待ちに待った夏休みが始まった

みんな思い思いの予定を語り合い教室を出ていく


いつもと違い神崎さんは起きていた

そして、クラスメイト達の様子を少し寂しそうに眺めていた


俺「神崎さん?」

蓮「なに?」

つい声をかけてちゃったけど、なんと言っていのか分からない

なんでそんな表情してるのか、なんて聞けないし……

俺「えーっと、あっ、今日!何かするんだよね?俺は何すればいいの?」

蓮「そうね、まずは……告白でもしましょうか」

こ、告白!?

俺「え?何を告白するの?もしかして、何かまだ重大な秘密があるの!?悪魔以上の!?」

蓮「なんでそうなるのよ」

俺「え?違うの?」

蓮「はぁ……いいからさっさと告ってよ」

俺「えっと……神崎蓮さん、大好きです。俺と付き合ってください!」

蓮「悪魔わたしでいいの?」

俺「神崎さんじゃなきゃダメなんだ」

蓮「そう。わかった。付き合ってあげる」

俺「ありがとう。これからよろしくね!」

蓮「まず、最初に教えてあげる。私の本当の名前」

俺「本当の名前?え?神崎蓮って偽名なの!?」

蓮「当たり前でしょ、私悪魔なんだから」

俺「そっか!」

蓮「私の名前はルカン・Zザック・ファーレンよ」

俺「ルカン?ざ?」

蓮「レンって呼んでちょうだい」

俺「蓮?」

蓮「愛称よ、ファーレンだからレン」

俺「えっと、レン」

レン「ええ」

俺「名前、教えてくれてありがと」

悪魔が本当の名前、真名を明かすということは相手を信用してないとできない事だ

真名は呪いや誓約で使われれば拒否できない強い拘束力がある

だから、真名を使えばどんな命令もできるようになってしまう

そんな大事なものを教えてくれたって事は、神崎さんもといファーレンは俺を恋人と認めてくれたって事だよな

俺「じゃあ、俺の事も名前で呼んでよ。大地って」

レン「そうね、大地」

俺「うっ……」

名前を呼ばれただけで鼓動が速くなる!

幸せで胸が苦しいほどに高鳴る


俺「あのさ、今になってどうして告白オッケーしてくれての?」

レン「一緒に七不思議を解いてくれたから、それと」

俺「それと?」

レン「こうして、協力してくれたから」

俺「ん?」

レン「私からも質問いいかな?」

俺「いいよ!何でも聞いて!」

レン「私の事、大事に思ってくれてる?」

俺「もちろん!」

レン「自分の命よりも?」

俺「そうだね!」

レン「即答ね、嬉しい。…………ねぇ、聞いてたでしょ?ベルン。この人間の幸福は私よ。さぁ、出てきて私を殺しなさい」

ベルン「ハハハ!こりゃー驚いタゼ!オレっちがいるって気付いてたんダナ?」

レン「当たり前でしょ。召喚した人間が幸福を感じてる時、アナタはいつもそこにいる」

ベルン「ハッ!お見通シカ!」

俺「その声は、あの時の!」

ベルン「イヤァ、びっくりダゼ?まさか人間を囮にしてオレっちを誘き出すナンテナ!」

俺「囮、だと?」

ベルン「ソッチの悪魔はオメーを利用したんダヨ!自分の目的の為ニナ!」

俺「目的?」

ベルン「ソウサ!そこにいる悪魔は不死のまじないを持ってるみたいダナ?だから自分ではシネナイ!」

俺「不死?呪い?死ねないってどういう」

ベルン「ソリャー本人から聞けばイイサ!最期に質問タイムをくれてヤル!」

俺「レン!どういう事?教えてよ!」

レン「私の願いの為にアイツの、ベルンの能力ちからが必要だったの。ベルンは幸福を奪う事に特化した存在だから、その能力の前では不死ですら無効化されるの」

俺「わかんないよ!なんで死のうとするの!?イヤだよ!そんなの!」

レン「私ね、長く永く生きてきたの。自分を取り巻く環境が破滅していくのをずっと見てきた。もう疲れちゃったの。もう友と呼べる皆の死を見たくないの!だから……」

俺「そんなの納得できるか!力づくで止めてやる!どこだ!どこに隠れてる!出て来い怨霊め!」

ベルン「時間切れダ」

ベルンと呼ばれた怨霊はフワッとレンの背後に現れた

俺「そこかー!!」

そして、手に持った大きな鎌でレンを背中から

俺「ヤメ」

刺し貫いた!

レン「グ……カハ……」

俺「レン!!」

レンは膝から崩れ倒れる

人間と違い血は出ておらず、代わりに黒いモヤの様なものが傷口から吹き出してきた

レン「ゴメンね?囮にして」

俺「そんな事より傷口を……」

レン「触らないで、アナタが死んでしまうから。折角生き永らえた命、無駄にしないで、ね?」

俺「そんな……これから夏休みなんだよ?祭りとか海とか、一緒に出かけたかったのに!もっと一緒にいたかったのに!」

レン「ほんとに、ゴメンね。でも、私は悪魔だから…人間のアナタとはどの道一緒には居られないの」

俺「そんな事ない!きっと何か良い方法があるから!」

レン「聞いて、最期のお願い」

俺「最後なんて言わないでよ、何でも聞くから、だから」

レン「生きて、未来を」

俺「その未来にレンが居ないなんてイヤだよ」

レン「もうお別れの時間みたい。最後にこんな事言うのもアレなんだけど、楽しかったわ。ほんの数カ月の短い間だけど、神崎蓮としてアナタと接している時間は楽しかったの。ありがとうね」


そう言って、レンは消滅した


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