7ー3 夏休み目前!

帰宅後、一人書庫で唸っていると妹が様子を見に来た

妹「兄さん、何してるんですか?」

俺「調べもの」

妹「そうですか……もしかして、兄さんも呪いに興味が!?」

俺「それはない!」

妹「じゃあ何調べてるんですか?」

俺「んーー……目に見えないモノへの対抗法かな」

妹「呪いですか!?」

俺「いや、多分違うぞ」

妹「呪い以外で、目に見えない対抗しなきゃいけないモノ……?」

俺「そうだな」

妹「そんなモノあるんですか?」

俺「あるから、調べてるんだよ」

妹「それはそうと、兄さん」

俺「なんだ、妹よ」

妹「これを機に呪いヤッてみませんか?意中のあの子も一殺イチコロですよ!!」

俺「ヤらねぇよ!何物騒な事言ってんだよ!そもそも、意中のあの子殺しちゃダメだろ!」

妹「えー……ずっと一緒に居られますよ?四六時中、三六五日ずーと背後にくっ憑いてくれますよ!」

俺「何それ怖い!」

妹「大丈夫です!怖いのは始めだけです!慣れれば怖くないですよ?」

俺「そんなの慣れたくねーよ!」

妹「ダメですか……あの、兄さん……」

俺「なんだ?呪いは必要ないぞ」

妹「いえ、そうではなくて……兄さんはやれば出来るのに、なんで……」

俺「前に言ったろ、俺には不釣り合いだって」

妹「でも……今の兄さんなら」

俺「今も昔も俺は俺だよ。何も変わってない」

妹「そんなことない!だって兄さんがずっと練習してたの知ってます!ゲームしてる時も、アニメ見てる時も、お風呂の時だって!今の兄さんなら力を使いこなせるはずです!!」

俺「ちょっと待て!なんで風呂の時の事知ってるんだよ!?」

妹「それは兄さんが心配だったから……」

俺「心配しすぎだよ!」

妹「これは家族愛です、だからセーフです」

俺「……そっか、愛か……そうだな……」

神崎さんを、俺は愛してる……のかな……

妹「どうしました?」

俺「今さ、好きなヒトがいるんだよ」

妹「え!?いきなりのカミングアウト!?美少女は画面の中から出てきませんよ!?」

俺「失敬な、ちゃんと現実にいる娘だよ!」

妹「信じられません……兄さんが人間の女の子に興味を持つなんて……」

俺「あーーー……人間、ではないかな」

妹「人外!?まさかリアルケモナーになったんですか!?」

俺「いやいやいや!違う!違う!」

妹「じゃあ……無機物?」

俺「違う!!ちゃんと生きてるよ!」

妹「なら……何に……?」

俺「……悪魔、だよ」

妹「悪、魔?冗談ですよね?ウチは退魔師の家系なんですよ?」

俺「冗談なんかじゃないよ」

妹「まさか呪われて!?今解呪します!魅了チャーム系の呪いは解呪できます!」

妹が解呪の呪文を唱える

妹「ふぅ……兄さん、今好きなヒトは?」

俺「悪魔の娘だよ」

妹「解呪に失敗した!?」

俺「そもそも呪わてないって!」

妹「おかしいです!倒すべき悪魔を好きになるなんて!悪魔を好きになるくらいなら妹である私を好きになってくださいよ!」

俺「いや、妹好きになっちゃダメだろ」

妹「兄さんの持ってるラノベで妹キャラ人気なんですよね!?」

俺「あれはフィクションだから、実際に妹好きになったらヤバいだろ」

妹「そんな……悪魔に負けえるなんて……」

俺「それより、今はアイツへの対抗法を探さないといけないんだから邪魔しないでくれ」

妹「じゃ、邪魔?」

妹は大人しく書庫から出ていった

これで落ち着いて調べられる



しかし

思ったよな対抗法は見つからなかった



母「そろそろ、ご飯よー」

俺「はーい」

さて、ひと休憩するか



父「大地、何を調べてるんだ?」

俺「ああ、ちょっとな」

母「無理はしないようにね」

俺「わかってる」

妹「あくま」

父「悪魔、だと?」

妹「兄さんは悪魔に心を奪われてしまいました」

なんてこと言ってんの!この妹はーー!!

母「そうなの?」

なんとか誤魔化さないと……

俺「え?いや?ナンノコト?」

母「何歳いくつになっても嘘が下手ねー」

父「呪いか?」

妹「私の解呪でもダメでした」

父「そうか」

俺「だから、呪われてなんかないって!」

父「なら、何を調べていた?」

俺「学校にいる目に見えないヤツへの対抗法」

母「目に見えない?」

俺「そう、多分悪霊的なモノなんだけど……何か違うんだよな」

父「そうか……なら、怨霊だろうな」

俺「怨霊?」

父「怨めしい妬ましい憎い、そういった負の感情が集まってできた霊だ」

俺「負の感情……」

父「お前の学校は、この地の鬼門にあるからな。そういったモノも出るのだろう」

俺「え?鬼門なの?」

母「そうよ、家と学校の間に神社あるでしょ?あそこが中心なのよ」

俺「そんなの初耳なんだけど!?」

父「当然知っていると思っていたんだが」

俺「……知らねーよ」

父「それで、怨霊がどうしたんだ?」

俺「ああ、七不思議を解いていったら出くわしたんだよ」

父「特徴は?」

俺「目に見えないのと……パンチ力は結構強い。あと、人間の幸福を食べるらしい」

母「殴られたの?怪我はしてない?」

俺「してないよ」

父「幸福を食らうモノ、か」

俺「そうそう」

父「さっきも言ったが、怨霊は負の感情の塊だ。幸福は嫌いな筈だ」

俺「うん?」

父「嫌いなモノを態々食べるヤツはいないだろう」

俺「それもそうだな」

父「そいつは幸福を食らうのではない、人間を不幸にして負の感情を集めているにすぎない」

俺「なるほど」

父「対抗法は術付で身を守り、結界を張って捕獲、そして封印する」

俺「そっか……封印すればいいのか。でも、俺に出来るかな」

父「できる。封印の札は自分で作れ、結界に関しては書庫の本で勉強しときなさい」

俺「ありがと、父さん」

母「あなたの道具は一式押入れに入ってるから、頑張んなさい」

俺「了解、母さん」

妹「書庫から、封印の本部屋に持っていってあげる」

俺「ありがとうな」

家族の協力で俺はアイツへの対抗手段を手に入れた


でも、俺には不安があった

数年前、俺は術を暴走させて友達に怪我を負わせてしまった

あの頃、自分のチカラに溺れて天狗になっていた

もう二度とあんなコトは起こさない、そう誓ったんだ


でも、やらなきゃならない……神崎さんを守る為に


翌日、寝不足気味で登校する

しかし、神崎さんからは何も言ってこない

返ってきた答案は酷いものだった……

今はそんなコトを気にしてる余裕はない

なんとしても、アイツを倒さなきゃいけない……神崎さんはアイツを

利用したいみたいだけど、見返りに何を求められるか分からない

何かあったら俺が守るんだ


何もないまま1学期の終業式の日になった

テストは1/3ほどが赤点、他はギリギリ赤点を回避した

夏休みに浮かれるクラスメイト達

それを尻目に俺は決意に満ちていた

神崎さんが俺に目配せしたのだ

とうとう来たのだ

できるだけ準備はしてきた

自分に言い聞かせる

(きっと大丈夫だ)

神崎さんと笑い会える未来の為に、俺は出来る事をするだけだ

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