頭のおかしい恋愛のしかた

夕凪

はじまりのまえ

 十六年間生きてきて、その約八分の一である二年が経った今でも、あの日のことを思い出す。


 普通に、そう、それはもう至って普通の友達として仲が良かった君のことを、私はあの日も部活が終わるまで律義に待ってあげていた。

 と言っても、私も部活をしていたから待ち時間は十分そこらだったのだけれど。

 それでも中学生にとっての夕暮れ時の十分は長い。

 少しずつ低くなっていく気温も、私を置いて帰ってしまう部活終わりの生徒たちも、それを眺めている自分自身も、どうしようもなく寂しいものに感じた。


 自分が、世界にたった独りぼっちなように感じた。


 そういうわけで君が来てくれると安心して、嬉しくて、私は一人じゃないと実感できた。

 だから君のことを好きって聞かれるとそれはやっぱり間違いじゃなくて、でもそういう意味での好きじゃなくて。

 普通の友達として、普通に仲の良い友達として好きっていうことで、それは決して恋愛感情なんかじゃなくて。

 なのに、どうして。


 どうしてあの時の私は、君からの告白に頷いてしまったのだろう。

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