誰かが足りないクリスマス

嘉田 まりこ

息子のいないクリスマス

『二人とも元気な男の子ですよ』


 彼らに出会ったのはもうずっとずっと前のことだけれど、私はあの日のことを一生忘れることはない。


 小さな二人のナイトは、熱を出すのもお腹を壊すのも同じタイミングだった。

 胃腸炎にかかって次々と嘔吐された時は、今思い出しても苦笑いもの。


 それから、好きな色やデザインに多少の好みの差はあったけれど、服のサイズも靴のサイズも常に一緒だった。

 必ず二人分が必要だった上に、みるみる大きくなるものだから家計に響く響く。

 洗濯物もひどかったし。


 高校生になってからのお弁当箱は詰めても詰めても埋まらないくらい大きくなった。

 時間をかけて作った夕食もあっという間に食べてしまう。『昔はママおいしい!って食べたのに』 と拗ねる私を見て苦笑いするようにもなった。


 荒れたとか問題を起こしたとかで特別私を困らせることはなかったけれど、手をかけることがひとつ、またひとつと少なくなる度に嬉しさの影に寂しさも生まれた。


 彼女が出来たことにソワソワしていた時だってあったのに、一緒に生きていく人を見つけたと、かしこまって挨拶に来た。私の手の中から本当に飛び立ってゆく瞬間だった。


「もう大きなケーキを焼く必要もないのね」

「寂しそうだね」


 私は寂しい。やっぱり寂しい。

 図体がでかくなっても、苦笑いされても、いくつになっても彼らは私の大切な息子だから。


「でも、あのお店に行けるのは嬉しいの」

「それは予約した甲斐があったな」

「新しい服でも買おうかな」


 今まで息子にかけていた分で私の服を買う。これが嬉しいのも本音。

 少し贅沢してもいいわよね。


 息子のいないクリスマス。

 さぁて、どう楽しんでいこうかしら♪

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