第6話登場漢柳の解説

鈍灰・顔路合作 「何時送春信乎」


秋気風与発  秋気風とともに発し

客鳥嘴終回  客鳥くちばし終に回す

淹久綴離歌  淹久えんきゅうして離歌を綴り

手指拭塵埃  手指は塵埃を拭う

筆鋒霑酔惑  筆鋒は霑酔てんすいして惑い

別酒盃重堆  別酒にて盃重なりてうずたか

一心思之已  一心に之を思うのみ

春信帰去来  春信に帰りなんいざとせんと


押韻 上平十灰(回、埃、堆、来)


語釈

・客鳥…渡り鳥。

・淹久…長く留まること。

・筆鋒…筆先。筆の勢い。

・霑酔…襟首などがじっとりするほどひどく酔うこと。

・春信…春の便り。

・帰去来…「帰りましょう」の意。「去来」は語調を整える助辞で「いざ」と訓じられる。


秋の空気は風と共に立ち去っていき、

渡り鳥もそのくちばしを故郷の方へと向け始めた。

長く留まる中で(別れの時の為に)送別の詩を考えているものの、

(作るのが億劫で)指で溜まったほこりを拭ってばかりだ。

筆つきはもうひどく酔っていてぐだぐだだし、

別れの酒により重ねられた杯がうず高く積み上がっている。

(良い詩句が浮かばないし)今は一心にこれを思うだけだ。

春の便りに「そちらに帰りましょう」の一言を添えることだけを。



「長旅遥遥到桃源~」の漢柳は第二話の解説に収録されているのでここでは省きます。

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