愛してるって言わないで
バーの入り口に佇む一人のイケメン。
それが、今晩の待ち合わせ相手だ。
「遅い。いつまで待たせるつもりだ?まあ、いい。妻には遅れると言ってある。」
この人は、那賀 雄太 35歳で一応社長様だ。
ちなみに、妻子持ちで子供は五歳の子が一人いるらしい。
「あら、うるさいわね。男は女を待つものよ。」
35の男が25の女と会う。
つまり、私はこいつの愛人ポジションって感じだ。
とりあえず店先に居ても目立つということで中に入ることになった。
バーテンダーにノンカクテルを頼み横目に雄太を眺める。
こいつは、容姿は完璧だ。
少し長い髪を右へ少し流し、男の癖に長い睫毛の奥を覗く黒い妖艶な黒。
嗚呼、ずっと見つめていたら吸い込まれそうだ。
鼻に、かすかに香る香水とアルコールの匂い。
ダメだ。こいつと居ると酔わされ狂わされて流されそうだ。
ずっと、目が離せず見つめていたらこちらに気づき妖艶な笑みを浮かべ
「なんだ?ずっと見つめているが。惚れちまったか?それとも香りで酔ったか?どっちにしろ、おこちゃまだな。」
一応こんな男だが、愛人だが 私の愛している男だ。今だけ私だけを写すその目が細められたとき胸が締め付けられて口から愛しているの言葉が飛び出そうになった。
「うるさいわ。少しは黙れないのかしら。子ども扱いされては困るわ。だって、お酒…飲めないでしょ?」
ちょうど、バーテンダーから貰ったさっき頼んだノンカクテルを見せ付けるように色っぽく飲み干してみせる。
「はぁ。どうかしら?おじいさまには、少し刺激が強すぎたかしら?」
そういい、妖艶な笑みを真似で返してみる。
雄太は、なにを思ったかしらないがウォッカを一口で飲み干し。
強引に私の頬を自分の方に向かして言い放った。
「愛してる。そういう負けず嫌いな子供っぽい性格も全て…。君は、ずるいね。君の全てが欲しいよ。」
そういって、そっと口付けをした。
甘い。でも、苦い。
愛してるだなんて言わないで。本気じゃないくせに。本命は奥さんのくせに。
ずるいのは貴方だ。そんな苦さをノンカクテルと一緒に飲み干して笑って魅せた。
短編を書いてみた。 @sutekinakanbusama
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