スイングバイ

wataru

第1話


 僕は衛星のない孤独な惑星。

 物心ついてから話し相手と言えばたまに通る彗星くらいだった。

 あいにくこの惑星には生き物が生まれなかったから暖めがいもない。

 退屈な僕は大声で隣の惑星に叫んでみたりしたが、声は返ってこなかった。

 そんな時にどこかの惑星の生き物が作った乗り物が飛んできた。

 そいつは僕の引力に捕まって惑星の周りをぐるぐると回り出した。

 僕は宇宙船と名乗るそれと三日三晩おしゃべりをした。どんな所から来たのか、どうやって来たのか、どんな生き物なのか。

 そんな話をできるのが楽しくてたまらなかった。

 けれど、しばらくすると宇宙船は僕の引力圏から離れて隣の惑星に向かって旅立ってしまった。

 彼らの目的は隣の惑星の調査で、燃料を節約するために僕の周りを回って最接近するのを待っていたらしい。

 僕は不思議と悲しくはなかった。こんな僕でも誰かの役に立てるんだと嬉しかった。

 それに宇宙船は帰りにまた僕に寄ってくれると約束をした。生まれて初めての約束だ。

 なにやら僕の引力で宇宙船を加速させるらしい。

 二度も誰かの役に立てるなんて、僕は幸せだった。

 僕はここに一人ぼっちで生まれた意味があると知った。

 生まれて初めての約束を果たすために、今日も僕は張り切って回る。

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スイングバイ wataru @tpwata8991

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