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『とうとう今年もやってきました。リーグ・グロリアス・ジャパン・オンライントーナメント! 皆さん、盛り上がってますかーっ!?』


『うぉおおおおおおおおおおおおおおお!!!』


 片手にマイクを持ち声を張り上げる金髪美人女性に、ギャラリーの熱狂的な歓声がステージ中を熱で包む。


 もちろんここはゲームの中。特設イベント会場だ。

 土曜の朝9時という早い時間帯なのにもかかわらず、たくさんの人が集まっていた。


『今年は例年より早い開催となってしまい、まだ準備ができていないチームもたくさんあるかと思います』


 ですが、と彼女は言葉を区切って、


『皆さんの練習の成果は、きっと我々視聴者を魅了させてくれるでしょう!!』


 彼女は、eスポーツキャスター。

 洲条紡すじょう つむぐ


 日本LG界の顔、と言われている人でもある。

 あまりゲームを知らない人でも、この人の顔なら知っているなんて人も多い。


『では今年も私――洲条紡すじょう つむぐが開会の音頭を取らせていただきます!! それではみなさん、行きますよー!? 用意はいいですかー!?』


 ステージの中央に立つ洲条が、手を高くかかげて、


『さぁ、今年はいったいどんなドラマが待ち受けているのでしょうか!?』


 マイクを持つ手に、いっそう力を込めて、もう片方の手で指を折っていく。

  

 ――3。


『第1回から数多のプロプレーヤを輩出してきたこのオンライントーナメント』


 ――2。


『今回の優勝賞金はなんと1000万円にまであがることになりました!!』


 ――1。


『それと共に、このトロフィーを手にするのはどのチームになるのでしょうかっ!?』


 ――0。


 ぱぁんっ! と激しい効果音と今まで一番というほどの歓声が大地を轟かせる。



『これより《リーグ・グロリアス・ジャパン・オンライントーナメント》、開幕です!!!』



 ◇  ◇  ◇



 ジャパン・オンライントーナメント予選は、2日間にかけて行われる。

 1日4試合ずつの計8試合。

 試合形式は、すべてBo1の1本勝負。

 参加チームも全国から集まり多いため、予選はかなりハードなスケジュールが組まれている。


「俺たちはHブロックか………微妙だな」


 トーナメント表を見ながら、よしあきが言った。


 チーム数は端数になることが多いため、一部のチームは7試合ですむなんてところもある。

 けれど俺たちは残念なことに8試合だった。


「レン、どっか知っているチームとかプレーヤーっているか?」

「分かんないわ……多すぎて把握しきれない」

 

 1ブロックで200チーム以上もあるから、5vs5で1000人以上。

 補欠も含めるとロースターは7人まで登録可能だから、調べるだけで相当な骨が折れる。


「それにあんたみたいにサブアカウントなんて使ってたら分かんないわよ。実際に相手してみないとね。」


 でも、と言葉を切ると、


「ひとつだけ、知ってるところがあるわ」


 そう言って、指さしたのはちょうど俺らとは逆側にいるチーム。


「あたしの学校の名前だもん、これ」

「強いのか?」

「分かんない。興味ないし」

「そうか。なんかあったら、教えてくれ」

「ん」


 そう言って、よしあきは逆上と中条の方を見る。

 2人は軽くストレッチをして、試合前の緊張をほぐしていた。


 適度に緊張あhほぐしておかないと硬いプレーになってしまう。何せBo1だから一度負けてしまえばそれで終わりなのだ。

 よしあきとしても、ちょっとばかり心配だった。特にボットレーンの中条と長柄が一番メンタルに関しては危うそうに見えた。



 ◇  ◇  ◇



「後ろから加勢できるそれ! そのまま行って逆上さん!」

「わ、分かった!」


 7割ほど逆上が対面のHPを削ったところで、レンが逆上の5メートルほど後ろ――ファーストタワーの後方から、スナイパーで一撃。


 レンのロールであるスナイパーは、かなり遠距離から敵を狙撃できるのがストロングポイントだ。

 流れるような連携で相手をキル。


「ナイスー!」「ナイス!」


 弾むような声があがる。


「トップは順調だ。ファーストタワーまで狙える。相手が狙って来るかもしれない」

「分かった。あたしも寄る」


 続いてはよしあきとレンのコンビ技。


「敵きたぞっ!」


 ――レーン下のブッシュから、敵のガンク。


 よしあきが一度後退。相手は殺せると判断し、チェイスしてくる。


「準備OK!」


 レンが言った瞬間。

 よしあきが、タイミングを見計らったように相手のガンクに合わせて、切り返しを仕掛ける。


「ウルト行くぞっ!」


《覚醒飛翔波》を敵のど真ん中に叩きつけて、その衝撃で相手は打ち上がり、行動不可能。

 その僅かな隙で、ひたすらレンがHPを削っていく。

 スナイパーは装填から発射まで時間がかかるが、その時間はよしあきが十分に用意うしてくれた。

 難なく相手をキル。


「ナイス! こっちはもう完全に大丈夫だ。心配ない」

「分かった」


 …………。

 そこから試合は、ほとんどワンサイドゲームといっていいほど、こっちのペースを維持していくことができた。



 ◇  ◇  ◇



 初日の4試合は、スムーズに勝つことができた。

 全体を通してみると、ほとんどレンがゲームを支配して、キャリーしていた。


 しかし、

 彼女くらいの実力ならそれくらいは容易いだろう。

 それに、最初だからか、相手もそこまで強くなかった。


「んじゃこれで解散。明日も頼むぞ」

「「「「はい」」」」


 安心したような、少し浮ついたような声が、響きわたる。

 表情も、どこかホッとしているような、


「それにしても、結構楽だったよね」


 逆上が、ふうーっと息を吐きながらいう。


「油断するなよ。明日は更に強くなるから。調子に乗りすぎると痛い目にあうぞ」


 元々強い本戦の奴等はここにはいないのだ。

 だから自然と予選のレベル自体は下がる。抽選だとしても、ベテランとエンカウントする確率は低い。



 そうして、よしあきたちは、1日目は全試合勝利で終えたのだった。














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