第27話 遊開


「では、ゲームを開始いたします。」


アリスのその一言が発せられ、松本と隼人の体の拘束、および相手の姿や声が聞こえない状態が解除され互いに相手を視界にいれた。


「オラァいくぞクソガキ!」


出会った当初同様、隼人は松本めがけ高速でダッシュした。


どう考えても人間とは思えない初速と加速をしているあたり彼も何かの能力持ちなのだろう。


そんなことを思った松本の鼻からは鼻血が垂れた。


こんな危機的状況にもかかわらず興奮を抑えられなかったのだ。


「死ね!」


10メートルの距離を一瞬で詰めて松本に殴るために拳を振り上げる隼人。


松本はとっさに顔の前で両腕をクロスして攻撃に備える。


ゴッ!


鈍い音がこの広い立方体の部屋に響く。


5メートルほど後ろに吹っ飛ぶ松本。


「効かねーよ」


挑発的な態度をとり松本は敵を煽る。


本来であれば骨折してもおかしくない威力だが、この「人間麻雀」のルールでは今のところノーダメージだ。


松本の挑発を受けて隼人が追撃を入れるべくまたも突進しようとした時だ。


「ギャンブルウェポン!」


松本はもう一つの能力を発動した。


「おっ!?」


またも体の動きを止められたことに驚く隼人。


「あー?お前またこうやって動き留めて今度は何がしたいんだ?」


「まあ落ち着けよゴリラ。」


「ゴ・リ・ラだと!?

お前は地獄行き決定だ。」


「そっくりそのまま返すぜ、こいつでな。」


松本の右手には”12枚のカード”が握られていた。


そのカードはまるでタロットカードのような変わった絵がそれぞれ描かれていた。


そのカードは松本の手を離れ宙に浮いた。


そのまま隼人を囲むように1枚1枚カードが隼人の周りをまわっている。


「その中から1枚好きなカードを選べ。」


松本は隼人に指示した。


「あー?なんでお前の命令に従わないといけないんだよ!

やだね。俺は選ばない。」


「そうか、じゃあお前は3分後に内蔵ぶちまけて死ぬことになるけどいいのか?」


普段とは人が変わったかのように不敵な笑みを浮かべる松本。


「あ?ふざけんなそんな理不尽通るわけねえだろ!

そもそもそんなチート能力あるわけねえだろ!

選ばねえぞ俺は!」


「そうか。それなら3分待つまでだ。」


・・・・・・・・・・・。


沈黙のまま1分が過ぎた時だった。


「そういえば”それ”って何なんだ?」


不意に松本は口を開いた。


「あ?”それ”ってなんだよ。」


その言葉を発せられた直後だった。


松本の右手に1枚のカードが返ってきた。


「あー!?俺は選んでねえぞ!」


「選んだじゃねえかよ、”それ”って。」


「あ。はめやがったなクソが!」


「ギャンブルに嘘がないわけないだろゴリラちゃん。」


顔を真っ赤にして黙る隼人。


そんなのは無視してカードを見る松本。


「ほぉ。あたりだ。

ナイスチョイスだよ隼人君。」


カードには女性の生首と、鎧をまとった戦士が描かれていた。


ピカッ


手に握られたカードが光った直後、松本の手には別のものが握られていた。



その手には”怪しげな女性の顔が彫られた神々しい盾”が握られていた。



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ザ・デビル 大鳥翔太朗 @otori_syotaro

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