新撰組の魅力は、それが殿様でも家老でもなく、また、全国に有名な国学者でも志士でもない。その素性はすべてが一般庶民であることです。その悩み悶え苦しむ姿は私達読者が自らを重ねやすく、同時に自分の弱さと共感をその物語の中に再発見させてくれます。
物語では幼なじみの3人が新撰組に入り、そこでまず半助の公金横領から士道不覚悟切腹という新撰組らしい鉄の掟が下されて半助の死が訪れます。
残された又四郎と数馬は、半助の死を契機に次第にすれ違いが生まれてきます。誰もが、半助や数馬になるかもしれません。特に、周りに流されてしまいがちな又四郎の心境は、私を含み、少なからず一般的な事勿主義的日本人の忸怩たる共感を生むでしょう。
英雄でも有名人でもなんでもない一般庶民の、もうひとつの新撰組群像をこの中に見ることができるかもしれません。