第25話 夢色の歩み
犬を飼うのは俺の人生でも夢の人生でも初めてだった。
なのでなにぶん、犬の知識は皆無。
俺は、かな、を見ながら遊ぶ夢を見る。
夢は本当に嬉しそうにお世話している感じだ。
その姿を見ながら笑みを浮かべつつ俺は会社に行く為に準備する。
「お兄」
「くうん♪」
「.....夢?.....それに、かな。どうした」
「本当に有難う。買ってくれて」
「.....ああ。その事か。全然気にする事じゃない。お前の為なら何でもするつもりだったしな」
「.....かなちゃんという家族が増えて.....私はきっとまた一歩を歩み出せるよ!」
元気溌剌だ。
そいつぁ何よりだ。
俺は言いながら笑みを浮かべる。
それから夢の頭をガシガシと撫でる。
夢は、やめてぇ!、と言いながら慌てる。
「お前も小学校に行く準備しないとな」
「.....だね。お兄」
「.....?.....何か考えているのか?」
「.....ねえ。お兄。.....私の胸のチクチク分かった気がする」
「.....な.....んだと」
俺は愕然とする。
でもこの場で言うのは恥ずかしいな、と夢は何も言わずに準備をする。
それからランドセルに教科書を入れる。
そして、ご飯食べてから話すね、と笑顔になる夢。
そうしてから俺達はご飯を食べてから。
家を出る。
その直後に、私ね。.....恋をしたんだね、と切り出した。
俺は、!、と思いながら、それは何で知ったんだ、と聞いてみる。
すると、お母さんが韓流ドラマを偶然観ていて.....それでその、知った感じかな、と言ってくる。
しまったな.....何てこった。
「.....私は.....お兄が好きなんだね」
「.....鈴さんめ.....油断したな」
「.....お兄。.....私はお兄が好き。.....でも叶わない願いだよね」
「.....まあ10歳も年が違うしな。あり得ない」
「.....お兄。待っていてくれる?私が大人になるまで」
「いやいやそれも無理があるだろ。お前が20歳の時俺は30超えているぞ?」
まあでも好きになったから、と言う夢。
それからランドセルを背負い直してから。
そのまま俺にニコッと笑顔になる夢。
俺はその顔を見つつ、そうか、と返事をした。
「.....ねえ。お兄」
「.....?.....どうした?」
「何でこんなに年が離れて生まれたんだろう私。.....10年遅く生まれたら.....お兄と一緒に色々出来たのにね」
「ああ。その事か。.....夢。.....俺達が10年違うのは神様がそうしたからだと思うぞ」
「.....え?」
だって考えてもみろ。
俺自身、お前が10年違う女の子だったら別の人がお前を救っていたかもしれないぞ、と俺は切り出してみる。
夢は、!、と思いながら俺を見てくる。
そして目を丸くした。
「.....こうやって誤差があったのは運命だよ。.....何か別の使命を持っているんだお前は」
「.....凄いね。.....お兄って。.....そんな考えにならなかった」
「.....そうか?.....そんなに凄いかな。俺」
「私は.....お兄みたいに考えられないから。子供だし」
「.....」
夢は俺の言葉に苦笑しながら門から外に出る。
それから歩き出した。
俺はその姿を見ながら、ふむ、と思う。
そうしてから俺も会社に行く準備をする為に動く。
「.....お兄。仕事頑張ってね」
「.....お前も頑張ってな。学校。今日テストだよな?」
「うん。勉強はしたけどテストだね」
「.....面倒だな。テストって」
「.....そうだねぇ。テスト面倒臭いね」
でもまあ将来の為だし、と両腕を腰に手を当てて言う夢。
俺はその姿を見ながら苦笑い。
それから、まあ確かにな、と夢の頭を撫でる。
すると夢は心地良さそうな顔をしていたが。
途中から何かハッとした。
「.....も、もう!お兄。止めて。恥ずかしい」
「.....そ、そうか?.....それはすまない」
俺は謝りながら夢の頭から手を離した。
何だか寂しい気持ちだが.....でも。
恥ずかしいならしない方が良い、と思う。
嫌われては意味無いしな。
「それはそうと.....お兄」
「うん?.....どうした?」
「かなちゃんってどれぐらい成長したら表に出れるのかな?」
「.....1ヶ月ぐらいかな。.....多分な」
「そうだっけ?」
「.....ああ。確か契約書にはそう書かれていたな」
俺はそう答えながらそのまま分かれ道に来る。
小学校と通勤の為に別れなければいけない。
俺は夢を見る。
夢は俺の姿に、大丈夫、と答えた。
「.....私は乗り越える。.....痛みの全てに」
「.....乗り越える時は俺も一緒にいるから。.....かなちゃんもそうだけどな」
「.....だね。お兄」
「.....ああ。だからお前は1人じゃない」
「.....ありがと」
言いながら、じゃあね。お兄。行ってきます、と手を振ってから小学校に夢は登校して行った。
俺はその姿を見ながら、よし、と張り切ってからそのまま通勤した。
やる気もそこそこである。
かな、夢のお陰かな、と思える感じだ。
今日も頑張ろう。
そういう気分になれた。
よし、と思う。
俺に小学生の義妹が出来た日々 アキノリ@pokkey11.1 @tanakasaburou
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