Lv1の勇者ですが騎士王になりました!

ELLE

第1話

「ぷやぁ!」

という奇妙な鳴き声をあげてスライムが襲いかかってくる。

「えいっ!」

ギルドに勇者登録をすると貰えるLv1の鉄剣でスライムを斬る。しかし、切れ味がいかんせん悪いので、叩く格好になる。

スライムが2メートルほど吹き飛び、

「ぷにぃ!」

と、可愛らしい鳴き声をあげる。

「やぁっ!」

上段に構えてからの一撃を放つ。

しかし、「ぷにん」という音を立てながら

スライムが横に避け、「ギィン!」という音を立てて剣が地面を叩く。

「このやろー!」

今度は中段に構えたままスライムに突撃する。スライムは先程の回避行動の反動で行動力を失っているので、綺麗に剣が突き刺さった。

「ぷくぁ!」

という鳴き声を最期に遺し、スライムは

[魔石]となった。

「ふぅ.....」

これが新人勇者[ケイト]の初討伐である。

ステータスはギルドでしか見れないが、

恐らくまだLvは1のままだろう。

田舎の村から[勇者の街]と呼ばれる

[ラブルス]に上京(?)したのは昨日のことだ。

田舎にいた頃に思い描いていたのと現実は違うんだなぁ.....と思いながらケイトは足を進める。

「ウルァァ!」

と、不意に狂気を孕んだ怒号がダンジョンに響く。かなり近い。ザッ、ザッと近づいてくる足音がする。ケイトは覚悟を決めた。

「こ、こいっ!」

その直後、姿を現したのは獰猛なことで有名な[魔獣イルファング]だった。

確か王都騎士団でも歯が立たないそうな。

ケイトはすぐに踵を返して走って逃げようと思ったが、イルファングの様子がどうもおかしい。距離が縮まり、体の細部が見えるようになると、その原因に気づいた。

たくさんの切り傷があり、出血もかなりしている。片目は無くなり、首にかなり大きな傷がある。恐らくは戦闘を終えたあとなのだろう。イルファングにここまでダメージを与えられたところを見ると、王都騎士団か。

少し可哀想な気がしないでもなかったが、

イルファングを倒したとなれば、かなりの経験値が入るはずだ。

ケイトは、先程鞘に収めたばかりの鉄剣を抜き、中段に構えた。

「ウルゥル.....」

イルファングは剣の輝きに警戒心をMAXにし、唸りをあげる。

「やぁぁっ!」

イルファングが回避行動を取るが、足にもかなりのダメージがあったのだろう。

バランスを崩し、ケイトの鉄剣はイルファングの横腹に炸裂した。

「ウルァァァ!」

怒号が飛ぶ。

イルファングが大きく口を開け、ケイトに噛み付こうと突っ込んでくる。とても怖い。「うわぁっ!」

本能的に横一文字に剣を薙ぐと、鉄剣はイルファングの顎を切り落とした。

「ウウウウ!」

と、音を発するだけとなったイルファングは

[魔石]となり、その命を落とした。

「終わっ.....た.....?」

ケイトは魔石を拾い上げ、ギルドで借りたポーチにしまう。

今日はこれくらいにしようと思い、ダンジョンを出た。


それから一月程がたった頃、食事中の昼のギルドに、王都騎士団の鎧を纏った騎士2人が訪れた。

「招集命令である!ケイトという名の者は名乗り出よ!」

厳かな声で呼ばれたのはケイトの名だった。

何か行けないことでもしたかなぁ.....と思いながらも、手を挙げる。

「こちらまで来い!」

言われるがままにハンバーグを食べるのを中止し、席を立ち、騎士の元へと向かう。

「貴殿には王都まで来てもらう。よろしいか?」

よろしいか?と聞かれても王都からの招集ならば、 はい としか答えようがないので、頷いた。

馬車に乗せられ、何時間程がすぎただろうか。気がつけばケイトは立派なお城の前にいた。

「失礼いたす!」

騎士が礼をして城に入って行くのに習い、ケイトも礼をして城に入城する。

レンガ造りの、おとぎの国に出てきそうなオーソドックスな城だ。

やたら長い廊下を歩き、1辺10メートルはあるであろう、とてつもなく大きな2枚扉の前まで来た。

「ケイト殿を連れてきました!」

騎士が扉に向かってそう言うと、扉が開いた。

その先の席に座っていたのは、ケイトも本で見た事のある、王様だった。

騎士に行くよう促されたので、自分なりに丁寧に歩き、席の前で跪いた。

「ケイトでございます。陛下。」

礼儀もなっていないであろうケイトの挨拶に何故か王はにんまりとし、笑った。

「よくぞ参った、ケイト殿!

貴殿がここに呼ばれた理由はご存知か?」

ケイトが知るわけがない。

「いいえ、存じ上げません。」

すると、王はまた笑った。

「そうかそうか!それはめでたい!

突然なのだがな.....」

何がめでたいのだろう?

「ケイト殿には王都騎士団の騎士王を務めて頂きたい!」

はぁ!?騎士王!?

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