世界を救った勇者を、世界は放っておかなかった。

かつて勇者として魔王を倒し、世界を救ったエリザベート。
世界的な英雄となったわけですから、あとは悠々自適に暮らすのみ。なんてことになったらよかったのですが、彼女は名を変え正体を隠し、小さな島でひっそりと暮らしていました。

そうなったのも、戦いで苦しい思いをし、さらにその後、無常にも婚約破棄を言い渡され、心に傷を負ったから。
世界のために頑張った結果がこれとは、あんまりな仕打ち。もう十分すぎるほど頑張ったのですから、あとはせめて、このままこの地で平和に暮らせたら。
しかし、世界はそんなエリザベートを放ってはおきませんでした

集まる各国の要人。そして、倒したはずの魔王の復活。救ったはずの世界に、再び不穏な影が落ちてきます。

本作の魅力は、主人公エリザベートが既に一度世界を救い、とても強い力を持つ一方で、その心はあくまで一人の女の子のそれであるということ。
もちろん、並外れた勇敢さはあります。ですが辛いことがあれば当たり前に傷つきますし、恋をすれば戸惑い、ドキドキする。
戦いと共に彼女の恋も描かれるのですが、初めて知る感情にどうしていいかわからず、それでもその気持ちを大切にしようとする姿は、読んでいてとっても惹かれました。

勇者と言えど一人の人間。世界を救うのも大事ですが、彼女自身にも幸せになってほしいです。

再び世界の運命をかけた物語へと飛び込むことになったエリザベートに、どうか祝福を。

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