第4話 そして運命の日。電話が鳴った!
次の日の午前十時きっかりに、携帯が高らかに鳴り響いた。
電話を取ると受話器の向こうからする声は火星単独探査実行委員会の責任者であると自己紹介した。
この声には心当たりがある。あの男…最終試験のとき真ん中に座っていた奴だ。
「おめでとう、君は宇宙飛行士として正式に選抜された」
もちろん俺は声を張って朗らかに答えた。
「ありがとうございます!!ご期待に添えるよう精一杯努力します」
しかし、電話の主はまだ話の続きがあるらしい。
「選ばれたのは君だ。…しかし、一つ残念な話がある」
「えっ…それはどういうことですか?」
嫌な予感がした。
「実は昨夜急に今回の火星探査計画そのものに重大かつ根本的な問題点が見つかってしまったのだ。よって計画は延期されることとなった。」
「どういうことですか?一体どのくらいかかるんですか?」
「検討もつかんがおよそ10年は見ていてほしい」
思わず絶句する。
昨日取引した話では俺はその時には…ええと、一体どうなっていたんだっけ。
俺が差し出した時間は確か…そう、ちょうど10年。
冷や汗が手のひらからにじみ出て思わず電話を落としそうになる。
「もしもし?聴いているか?」
「ああ、大丈夫です。どうぞつづけて?」
震える手で握り直して耳に押し付けると
男はなだめるように続けた。
「心配するな。計画は必ず実行される。
だから君は大船に乗ったつもりで訓練を積みなさい。これから10年間、ぜひ出発の時まで有意義な時を過ごしてほしい」
叔父の形見 青山天音 @amane2018
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。叔父の形見の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます