第3話 そして契約は成功。となればすることは一つ。
ボワン!
悪魔が時計の中に消えていったのを見届けると、俺は大慌てで荷造りを始めた。なにしろ、明日から俺の人生そのものが始まるのだ。
まず、明日の午前10時きっかりに宇宙局の火星探査計画チームから電話があり、俺は『合格』を告げられる。そして半年後、たった一人の宇宙飛行士を乗せたロケットが行く先は火星。往くのに2年、4年間火星での様々な探査や実験を遂行、成果を地球にもって還るのにまた2年。実に約8年もの「時」を必要とする一大プロジェクトのスタートだ!
「もし、君が合格した時には覚悟して欲しい。今回のミッションでは無事帰ってこられるという保証はできない」
長い選抜テストの最終選考に残った時、試験官からそう告げられた。しかし、今、俺は確信している。そう、この人類の命運をかけた火星探査計画は必ず成功する!俺は沢山の手土産と共に無事帰還し、その後まもなく、ちょうど10年後、人生で一番幸せな瞬間に悪魔に命を取られて死ぬ。
そしてさらに、おれは死ぬ事によって英雄となり、永遠に人類の歴史にその名を刻むというこの上もない栄誉を受ける事になるのだ!
俺は改めて叔父の懐中時計を手に取った。もちろんこの時計は肌身離さず火星に持って行くつもりだ。
億万長者だったが若くして突然死した叔父だったが、宇宙飛行士になりたいと夢を語る俺をずっと励まして何かと援助してくれたのだった。そして、人生の終わりに「次の持ち主」を俺に、と念をおしてまで遺してくれた大事な形見なのだから…。
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