第2話 悪魔に告げられた残りの寿命は、

「172万8千秒だな。お前は55歳で死ぬ」

「あと20年か。思ってたより相当早死にだな。で、死因は?」

「ガンだ。かなり苦しむことになるだろう。どうだ、俺の話に乗ってみろ。限りある人生を思いきり楽しむチャンスだぞ!」

俺はしばらく考えて、おそるおそる2つの質問をした。

「もし、契約の途中でこの時計が壊れたらどうなるんだ?」

悪魔はしたり顔でうなずいた。

「『 絶対に』そんなことにはならない。もし時計が壊れたりしたら、おまんまの食い上げになっちまうからな」

「じゃあ、契約中の俺の生命がもし危険にさらされたら?」

「それも我輩が全力で阻止する。大事なお前の時間は、我輩がいただくまで1秒たりとも死神なんぞには渡さん!」

 俺は心の中で大きくうなずいた。それだけ解かれば十分だ。そして悪魔に対して宣告した。

「よし、おまえと取引をしよう。俺の願いごとを聞いてくれたら、残りの人生半分をくれてやる」

さすがの悪魔も目を丸くした。

「おやおや、大きく出たな。お前の人生の半分といったら86万4千秒、つまり10年分の寿命だぞ。そうまでして欲しいとは、どんな大それた望みなのだ?」

「いや何、今、ちょっとしたテストを受けているところなんだ。そのテストに必ず、必ず受かるようにしてくれ」

途端に悪魔は拍子抜けした顔になった。

「なんと欲のないやつだ!よし、それならお安い御用だ。そのテストとやらに必ず受かるようとりはかろう。もちろんお前の寿命の半分と引き換えだ。一旦契約をしたら覆すことはできないぞ」

俺は力強く答えた。

「二言はない。契約は成立だ」

「本当にいいのだな。大分顔色が悪いぞ。まあ、無理もないか。ホッホ!」

 悪魔が右手を差し出してきたので、俺も右手で応え、俺たちは硬く握手を交わした。悪魔の手はやはり氷のように冷たかった。そして、俺の俺の右手はどうしようもないほど震えていた。

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