叔父の形見
青山天音
第1話 それは叔父の葬式からしばらくしてからのことだった。
死んだ叔父の形見に懐中時計をもらった。
手にとって裏表にひっくり返して検分するとどもこかしこも豪華な彫刻が施されており一分の隙もない。
ふむ、なかなか良い品だ。ちゃんと手入れをすればつえるのだろうか。
蓋をあけると文字盤が現れた。
時計の針はちょうど12時を指したまま止まっている。
俺は何気なく時計のネジを巻いた…すると。
ボワン!
紫色の煙と共に突然現れたのは、尖った耳、爬虫類のような冷たい瞳、そしてコウモリのような羽を持つ歪な生物。
俺は動転のあまり、思わず目の前にいるそいつの見た目通りの印象を叫んでいた。
「お、お前、さては悪魔だな!」
「ホッホ!察しのいいことで」
「失せろ!こんな時に縁起でもない!」
しかし、時計を窓から投げ捨てようとする俺の手を押さえて、悪魔は言った。
「いかにも我輩は魔界の眷属。どうだ、我輩と取引せぬか?」
その手のぞっとするような冷たい感触は、否応なしにこれは現実なのだと告げていた。
「悪魔はひとたび姿を見られたからには必ず取引の契約をせねばならぬのだ。さあ、欲しいものを言え、金か、女か?」
悪魔はぐっと顔を近づけてきた。その吐息の臭いことといったらない。
おれは恐怖でガタガタ震えながら懸命に考えを巡らせた。
「取引?いったい俺の何と取引するのだ?」
「おれは時計を通して人間の命の時間、つまり寿命を食らう悪魔だ。お前がさし出す時間に見あった分だけ願いをかなえてやろう。」
「時間?じゃあ、もしかして俺の寿命があと何年なのかわかるのか?」
「もちろんだ。ふうむ。」
悪魔は目を細めて、じっと俺の目を覗き込んだ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます