観光地に必要な4つの条件②(自然)
夜一はベアトリーチェに、暗黒大陸がいかに素晴らしい場所なのかを力説していた。
しかし、ベアトリーチェの反応は鈍い。
何故分からない!?
力説している夜一は、一向に伝わらないことに苛立ちを覚えはじめていた。
「なんでこの大陸の良さが分からないんですか!?」
気づかぬうちに口調は厳しくなる。
ベアトリーチェはビクッと体を震わせた。
夜一に強く迫られたことが堪えたらしいベアトリーチェは、はうぅと玉座から崩れ落ちた。
魔王様弱っ!?
この世界の住人は魔王を過大評価している。
そのせいで暗黒大陸の素晴らしさも伝わらない。
魔王の統治する大地。
そのイメージが大陸に住まう人たちに根付いてしまっているのだ。
しかし、昨今の映画事業でそのイメージも変わりつつある。
今が好機なのだ。
ベアトリーチェ自身も暗黒大陸に客人が増えることを望んでいた。
それなのに、ベアトリーチェはこの千載一遇のチャンスを不意にしようとしているのだ。
だからこそ夜一は腹が立って仕方がない。
メンタル激弱な魔王に代わって、執事であるメフィストが答える。
「まあ、この辺りは何も無いですからね」
夜一は絶句する。
ベアトリーチェはともかく(本人に言ったら怒られるかもしれない)。
メフィストすら暗黒大陸の可能性に気づいていないのだ。
「本気で言ってるんですか?」
「えっ? ええ」
戸惑ったように言葉を返すメフィストに、
「暗黒大陸の大自然は大陸にはない唯一無二のモノですよ」
その武器をアピールするものの、反応は芳しくない。
「でも自然なんてものはアピールポイントにはなりませんよ」
メフィストは簡単に言ってしまう。
アピールポイントになるんです!!
夜一は食い下がる。
見慣れたモノ――それも数百年と見続けてきたモノとなるとその良さが分からなくなるのだろう。
人は皆、無い物ねだりなのだ。
ベアトリーチェとメフィストは人ではないが、似たようなモノだ。
つまり大自然は客を呼ぶことができるストロングポイントなのである。
そして大自然を売りにしたい理由もある。
夜一は《ジャンク・ブティコ》の人間――商売人である。
大自然を売りにすることで利益を生み出せる。そのことに夜一は気づいていた。
「ベアトリーチェ、メフィストさん。これを見てください」
そう言って夜一はマジックバック(大容量)から多種多様な魔導具を取り出して見せる。
商品化前の製品を並べると、二人はおぉ、と感嘆の声を漏らす。
「お二人は、魔導具を普段お使いになりませんから、こうした物が珍しい。それと同じように、身近に自然の無い人たちは自然に対して今のお二人のような反応を示します。
つまり無駄に広い大森林も、無駄に大きな渓谷も、湖も、そのすべてがアピールポイントになるんです!!」
胸を張って夜一は、強い口調で宣言した。
夜一は加えて、
「田舎者よりも都会の人の方がお金持ってますからね。ただの(おいしい)水にも大金を出してくれます」
異世界で商売に携わっているうちに、夜一は守銭奴と見まごう商売人へとスキルアップ(?)していた。
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