異色のパーティー

「そこを何とか」


「無理です」


 夜一は日本の伝統文化(?)。土下座をセルシアに披露していた。


「うっ、そのポーズやめてください。何だか私が悪いことをしている気がしてきます」


(凄いな土下座。耐性がないと案外利くモノなのかも?)


 セルシアを困らせることが目的ではないので土下座をやめる。

 しかし何の目的もなく土下座をするほど夜一の土下座は安くない(はず)。

 土下座はお願い事があるときに行うものだ。


「僕は何としてでも宝玉が欲しい」


「だから私のをあげると……」


「そうじゃない!」


 この論争は平行線を辿る。


「今のウチの利益では出資はできませんよ。たまに冒険者ギルドに出ているラストダンジョン探索の報酬額ちゃんと見たことあります? 桁が違いますよ」


 確かに《ジャンク・ブティコ》に用意できる報酬額ではない。

 だからと言って諦める訳にはいかない。

 あの膨大な魔力があれば……スマホが使えるのだ。

 以前同じ魔力でいいのならと夜一はセルシアに協力してもらった事があった。

 だが、母親の如き「一日一時間」の制約を喰らってしまったのである。

 夜一は自由を求める。そのための宝玉。

 なんとしても手に入れたい。


「何か方法は……あっ」


 妙案でも何でもないが、愚案でもない気がしたので実行することにする。


「危険なのでやめてください」


 セルシアは冷静に止めた。


 …………

 ……

 …


「なんで店長がここに?」


「ヨイチさんが言っても聞かないからでしょう!」


 窘める口調でセルシア。


「お荷物になるのだけはやめてくれよ」


 冒険者の男がぶっきら棒に言う。

 夜一の考えた打開案は冒険者に同行すること。

 確実にラストダンジョンまで行けるだろうが、確実に死ぬ。

 それを防ぐために渋々セルシアも同行する。

 そんな二人の商人の同行を冒険者パーティーが渋々承諾。そんな渋々だらけの一行である。


(大丈夫……じゃないですよね)


 セルシアの不安は尽きない。

 冒険者たちも初めは反対していた。だからポーションなどを無料で提供。賄賂である。

 そのおかげで同行を許されたのだから、冒険者たちも現金な連中である。



 冒険者と商人という異色のパーティーが王都を出立する頃。《ジャンク・ブティコ》本店にて。


「なんで私が店番? 私の担当業務じゃない……」


 配送屋のアンナは、店番を夜一とセルシアに押し付けられていた。


(転職しようかな……)


 悪しきブラック体質は異世界にも浸透しつつあった(?)。

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