合同出資?円卓議会招集②
「それでは円卓議会合同出資会議を始めます」
透き通った声が会議場に響く。
凛とした佇まいの女性が場を仕切っていた。
本日の議事進行を務めるアリス・ルロワは聡明な人間である。
天才と馬鹿とは紙一重。商人として成功を収める人間は総じて天才。別の言い方をすれば変人。
そんな商人の世界で一握りしかいない成功者たち。それが円卓議会の成員たちである。
実のところアリスは議会の場が嫌いであった。
何故なら……変人しかいないから。
それだけならばまだいい。話し合いの場だと言うのにちっとも話が進まない。
この日も合同出資の話だと言うのに話が脱線しまくる。
(なんで出資話から誰が一番美人かなんて話になっているんだ……。もう《ジャンク・ブティコ》の店主が一番でいいじゃないか)
碌な人間がいない。商人としては超が付く一流でも商売の事を除けばダメ人間。
円卓議会とはそんな集まりだ。
男の方は「宝玉、宝玉」と興奮気味。
女の方もアンジェラとなにやら話し込んでいる。
円卓議会において信仰の役割は議題の投下。
今回で言えば……
「もう面倒なので本題に入ります。冒険者ギルドへのラストダンジョン探索への出資について」
全員の目の色が一瞬にして変わる。
獲物を目の前にした肉食獣のような鋭いモノへと変化する。
「今回の出資の配分はどのようにしましょうか」
「純利益の高い順で出資額を決めればいいのでは」
「出したいだけ出せばいい」
「それでは歯止めが利かなくなるでしょう」
商売の事となると急に頭が回りだす辺りもアリスは好かなかった。
「ちょっと待ってくださいよ。純利益順だったらウチは何番目?」
「《ジャンク・ブティコ》さんは七、八番目でしょう」
「それじゃ宝玉は回ってこないじゃないですか!」
出資した額に高い順に宝玉が流れてくる。大規模探索でよくて三、四つ程度しか見つからない。
八番目ともなるとほぼ100パーセント宝玉は手に入らない。
正直、勝手にやってくれ。
アリスはうんざりしていた。
元から出資する気のない人間にとっては時間を無駄に割かれるだけだ。
アリスはさじを投げた。
(結局いつもみたくなるんだろうし……)
進行役のアリスが傍観者になった瞬間事態は動く。
「それじゃあ、各々で依頼という形で出資してはいかがですかね?」
純利益トップ4のひとり。セス・スミットが言った。
「「異議なし!」」
即断即決。
結局、商人たちに結束力などない。己が利益の追求。それこそが商人の本質である。
(ほんとになんで召集なんてかけるんだろ? まともな話し合いなんてした試しがないのに)
アリスは深いため息をついて、真っ先に会議場を出た。
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