テレビでパニック!?②

 駆けつけた夜一は叫ぶ。


「どうしました!! 大丈夫ですかッ!!?」


 勢い良く部屋に飛び込む。

 セルシアだけでなく複数の人の声が聞こえる。


(まさか、侵入者!?)


 だが、姿は見当たらない。

 それにおかしな点もある。

 声がやたらと低い位置からするのだ。

 視線を落とした先にはテレビ。


(まさか……な)


 液晶画面には「お昼の顔」と呼ばれるタレントが映っていた。


「なんでテレビが映ってるんだッ!?」


 疑問符が乱立する。

 セルシアも冷静さを欠いている中、夜一までパニックを起こしてしまう。

 もはや収拾がつかなくなってしまっていた。


「これは一体!?」


「何なのでしょう?」


 質問自体は噛み合っていないが、会話としては成立している。

 しばしの狂乱の後。


「なんでテレビ点いてるんですか?」


「分かりません」


「この世界、電波飛んでます?」


「分かりません」


「ターモさんって異世界人ですか?」


「分かりません」


 何も分からないセルシアをを夜一は責めない。責めることなんてできない。

 分からないのも無理はない。現代機器についての質問。夜一が分からないことをセルシアが知っている筈なんてないのだから。

 配線コードは現代日本の夜一の部屋に繋がっているらしかった。

 よくよく見るとプラグから抜けていたものだと思っていた配線。部屋のドアを境に消えていた。


(この配線の先に日本はあるんだ)


「この先にヨイチさんのいた世界があるんですね」


 セルシアは不安の入り混じった表情を浮かべる。

 もしかすると再び夜一が日本に帰ってしまうかもしれないからだ。

 すると夜一が何かを思い出したように慌ただしく部屋を出てく。

 そしてすぐにドタバタと足音を立てて戻ってくる。


「やっぱりだ」


 夜一の手にはスマホが握られていた。

 なんとWi-Fiが届いている。

 今まで使えないと諦めていた。だが、使うことは出来たのだ。

 セルシアの部屋という制限は設けられている。夜一の部屋では「!」の表示が出ていた。

 日本とネットワーク上であっても、繋がっているというのは大発見だ。

 上手くいけば自由な往来が可能になるかもしれない。

 そんな期待を抱いた瞬間。

 テレビの液晶画面が真っ暗になる。

 何事かと夜一が辺りを見回す。すると配線コードの先にプラグから抜けたコンセントがあった。先程まで日本でプラグに刺さっていたコンセントだ。

 日本と異世界を繋いでいた一本のコード。それがなくなった瞬間、Wi-Fiも切断された。


「終わった……」


 夜一の悲壮感溢れる呟きを、セルシアは黙って見つめていた。

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