アイス革命(パッケージ戦略)②

 魔法と言う未知の力は、夜一だけでは実現不可能なことを可能にさせた。


「アイスを異世界で食せるとは……感激っ!!」


 自分で作ったからだろうか、感動もひとしおである。

 バクバク食べ進める夜一。

 そんな夜一を眺めながら優雅にアイスを食すセルシア。

 異世界人の口にもアイスは美味しいモノらしい。


「これがヨイチさんの世界の食べ物なんですね」


「主食ではないですけどね」


 日本人の主食は米――今やパンが主食の地位をとってかわろうとしているらしいが、夜一はあくまで米派である。

 アイスはデザートに過ぎない。夜一にもアイスを主食にと願った可愛い時期はある。

 もちろん母親にその野望は打ち砕かれた。

 その結果、夜一の主食は幼少期より米である。


「このアイスというのは《ジャンク・ブティコ》で販売してもいいかもですね」


 セルシアの何気ない一言。

 そこで夜一はふと思い出す。


(普通にコンビニでアイス売ってるじゃん)


 今更ながらの気付きであった。


 …………

 ……

 …


 早速、学院店でアイスの販売を始めた。

 魔法を使えば牛乳から生クリームを抽出するのは難しくない。

 大量生産も可能だ。

 どんどん作ってどんどん売る。

 物珍しさからアイスの売れ行きはかなりいい。

 そしてリピーターは複数個購入→完食→再び購入。そんなことを繰り返す。

 多くの学生が人類(異世界人)未踏の味に魅了されていた。

 もはやアイスの虜となった学生たちはアイスを求めた。

 そして多くの学生が腹を下した。


 自制のきかない学生たちが悪い。

 だが、夜一は幼い頃。即ち自由に扱えるお金がない幼少期にアイスと出会っている。

 対して異世界の学生たちはアイスを購入できる金銭力がある。

 金銭力を持った人間がアイスと出会い、しかもそれが初遭遇であるのなら、大量消費は致し方ない。

 しかし、王立学院の多くの学生がトイレに駆け込む事態となった。それにより、お昼休み後の午後最初の授業を欠席したのは問題となった。

 そしてその問題の矛先は《ジャンク・ブティコ》へと向けられた。


 大反響のアイス販売。

 しかしながら何らかの改善策を求められる。

 夜一は思案する。

 販売中止など論外。だが今のままの販売方法ではまた問題が起こるの必定。


 現代日本の価格設定に近づけてアイスの価格を設定していた。

 つまり、貴族の子息たちにとっては激安嗜好品なのである。


(いっそのこと高級品にしてしまうか)


 異世界の文明レベルを考えれば高級品でもおかしくない。

 ただ価格を上げると学生たちの反感を買うかもしれない。それだけは避ける必要がある。

 早急な対策が求められる――。


 夜一は頭を悩ませるばかりであった。

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