数字を見極めなければ損をする(少数の法則)①
国王との謁見を終え、無事に王立学院への出店の許可を得た。
やはり学内にコンビニは必須。夜一はそのように考えていた。
夜一が現代日本で通っていたキャンパスにはコンビニが入っていなかった。山中にある辺鄙な立地の大学では集客が見込めなかったのだろう。
友人の通うマンモス大学に行った時に、コンビニが当たり前のように存在していて羨ましく思った。
この世界では《ジャンク・ブティコ》がコンビニの役割を果たすのだ。
教育機関に――通う学生にとってコンビニは必要不可欠。
それは異世界であろうと同じはず。必ず需要はある。
しかし、何の考えも無しに出店してはいけない。
事前の下調べが求められる。
学生たちのニーズを把握するのだ。
学生たちが何を求めているのか、既存の学内施設でまかなえないものは何か。そうした需要を補う形で出店する。
そうすることで贔屓の顧客――顧客ロイヤルティを生み出し、確保する。
(そのためには……)
夜一は計画をすぐさま実行する。
「店長。少し出てきますね」
店の奥からセルシアが、「どちらまで?」と尋ねる。
夜一は「冒険者ギルドまで」と告げて店を出た。
…………
……
…
屈強な体躯の男たちの合間を縫って受付カウンターに向かう。
時刻は昼間。
こんな時間から酒を飲んでいる男たちは仕事をしているのだろうか。
それとも依頼完了の祝い酒だろうか。
そんなことを考えながら歩みを進める。
「あら、ヨイチさん。こんにちは」
「どうも、こんにちは」
すでに何度も冒険者ギルドには顔を出しているため、受付嬢たちギルド職員とは顔見知りになっていた。
「今日はどのようなご用件で?」
「仕事の依頼で来ました」
「どのような依頼でしょうか?」
「調査を依頼したいんです」
「調査ですか……」
受付嬢は、手元の紙に話をしながら依頼内容を記入してく。
その間、一切視線を手元に落とさない。
まさにプロの仕事だ。
ぜひとも《ジャンク・ブティコ》に欲しい人材だ、などと思っていると、
「お急ぎのようでしたら、現在、手の空いている者に直接依頼を出せますが、どうなさいますか?」
調査は早いに越したことはない。
夜一は即決した。
「お願いします」
「かしこまりました。では、こちらの中からお選びいただけますか」
受付嬢は数枚の書類を並べた。
冒険者ギルドに加盟している冒険者のリストのようだ。
名前、階級、依頼料の相場が書かれている。
今回の調査に危険は伴わない。
学生相手の市場調査だ。
受付嬢が見繕った冒険者の多くが
依頼内容からすれば妥当なところだろう。だからと言って誰でもいいわけではない。
リストに目を通していくと、
(おっ?)
一人だけ階級が異なるものがいいた。
ライア・プルート。
依頼料も
まだ、
これは良い買い物かもしれない。そう思い受付嬢に「この人で」と指でさす。
「ライアさんですか……」
歯切れの悪い受付嬢。
少し気になりはしたが、大した問題ではないと夜一は判断。
お願いしますと受付嬢言うと、受付嬢は「少々お待ちください」とフロアに出て行った。
受付嬢が連れてきた男――ライア・プルートは握手を求めてきた。
「よろしくお願いします」
夜一はライアの手を取り握手を交わした。
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