第33話triumphal return


 午前1時45分。


 根城の勝手な行動から始まったこの戦争は始まって既に1時間は過ぎていた。そんな中、高杉灯影は自室でお気に入りの椅子に座りながら、ただただ時が経つのを待っている中で、部屋の外はとても騒がしい。何せ首領を除いた構成員3人が不在なのだから。

すると、部屋のドアをガンガンと叩く様子に、高杉は苛立ちを覚えながら「どうした?」と言葉を投げかける。

「勝手にドア叩いて入ってくんじゃねーよ。……んで?何の用だ?」

「只今、ようやく外の連中と連絡が取れました!」

「ああ……」


興味なさげに高杉は半分流しながら続く報告を聞く。

「根城様は新選組本拠地近くで死体となって発見。特に目立った外傷もないようで、樹戸様は新選組と交戦後回収、影踏様は郊外の花園神社での爆発に巻き込まれたとの情報です!」

「それで?」

「は?」

「それだけしか話はねーのかって話だよ。今はあいつらの様子が重要なんじゃねー。新選組の様子を見て来いって俺様は言ってんだ。分かるか?」


 冷たい眼差しで、部下を睨めば部下は恐怖に怯えたのか直立したままだ。その様子に溜息を吐く。

「もういい。今はあいつらの動きとここの勢力を固めろ。恐らく向こうは朝方にでも攻めてくるだろ。さっさと配置しな。」

「はっ、はい!」


 バタン、と閉まるドアの先で高杉は思う。

(恐らく根城の奴は樹戸さんが仕留めたんだろ。それにしても樹戸さんと影踏がやられるとはな……かなりの痛手だぜ?こりゃー……だが、向こうも向こうで痛手を負ったのは確かだ。なら――)


 バンッ、と自室から出ては、そのままガラス張りの廊下を渡っては、とある部屋の前で静止する。

「ちっ、開けるのも面倒だな。」


 ヒュンッ、と左足を軸にしては、そのまま右足で部屋のロックを破れば警告音が鳴るが、その警告装置さえガンッと手で叩き壊しては奥に進む。


 そこにあったパソコンに電源を入れてはカタカタと操作し、そこでUSBケーブルを差込み、自身のスマートフォンに樹戸の研究データを転送し、暗証番号を入れてはロックさせる。

「これで一応簡単な事だけはできるか。ちと半分は自前でやるっつーのは痛いけどよ。魔術としては……コイツか」


 部屋から出たときから手にしていた傾国の女を握り締めてはぐっ、と力を抜く。

(これでいざという時に頼りにはならねぇ……なら、やるしかねー……コイツを完全な形で動かす為にも)


 ググッ、と力を入れては握りつぶそうとする。だが、中々壊れないと言えど高杉は譲れない。

(俺様は決めてんだよ)

 ミシッ、と響く不吉な音と、それにこもるのは高杉の抱く意思。

「俺様が……」


 パキッ、パキッ、と白銀は剥がれていく。

「俺様が守ると!その為にぶっ壊す!」


 バキッ、という音と共に完全に白銀は砕け、そこからは黄金が輝いている。

「これだ」


 黄金に聳えるソレは、蕾の形をした物で、またとある力の象徴である。名はガ・ホー。ケルトの伝説にでてくる英雄ダーマットの持つ大小二本の槍の小を司り、名前は「黄槍」の意とされる物でマナナーン・マック・リールから貰ったもので、この槍で傷ついた者は回復できないと言われている。

(これで全部揃った)


 傾国の女の破片をガンッと踏みつぶせば、足元に魔法陣が描かれ、天井どころかスカイツリーさえ打ち破って天に魔法陣を描く。

(傾国の女による霊脈の操作に科学力、そしてなにより、魔術を補う武具は揃った。)

「ははは……ッ、はッ、これで俺様の勝ちだ。いくら5000の数を誇ろうとも、たった1人で全てをぶっ壊せる!」


 高らかにそう叫んでは、更に声を上げ、最後の仕上げに入ろうとする。

「全員傾注!」


 先程の命令のせいか、慌ただしく来る最後の決戦の為に準備を進める部下へと告げる。

「今から雌雄を決する時がきた!今だ、この機会を逃せばこの革命は成り立たない!故に戦え!この一戦だけはもぎ取ってみせろッ!」


 大将の一言に歓喜を受けたか、多くの部下は拍手を送り、高杉を褒め称えた。まるで、本当にこの世の救世主であるかのように。


 時は来た

「来いよ、野郎共。決戦の場所はここだ。」


 雌雄を決する最後の戦い。 勝った者こそが正義となる。

 さぁ始めよう。全てを守る為にまずは全て等しく砕けろ。



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