第25話apron of a gun
夜も更けた中、爆発は突然起こった。
「何の騒ぎだ!?」
先程まで対『生命の樹』の為の作戦を練っていた土方だけでなく、多くの隊員がこの大爆発で目を覚ました。
すぐに予備隊と第2部隊、第3部隊、第5部隊が爆心地の方へと向かうが、向かって10分で十分に行ける距離だというのに15分経っても先に出動した予備隊から応答がない中で、土方は指令を出す。
「全隊員出動準備を行え!但し第4部隊、第8部隊、第1部隊は待機。各自連絡が取れる者は優先的に回せ!南條、現場からの連絡は?」
すぐに内線で情報課へと繋げば南條が応答するが、そこで意外な事実を知る。
「それが何の応答もない!今、近くの防犯カメラにクラッキングしたけど、防犯及び監視カメラは全て破壊されているんだ。」
「何だと!?」
もし、この南條の報告が真実だとすれば、先に出た予備隊は全滅したという事になる。ギリッと歯を噛み締めては次の指令を出す。
「第2部隊、第3部隊、第5部隊。即刻現場へと急げ!まずは相手を特定しろ!」
燃え盛る炎の中、根城はニタリと笑いながら根城は鼻歌を口ずさんでいる。まるでまだ消化不良だと言い切るかのように。
襲撃してから15分の間に全ての予備隊が全滅した。突然空から斬りかかり、パトカーごと爆破させた上で残った者は全て斬り殺す。正に短時間の犯行であった。すると、痺れを切らしたのか、チッと軽く舌打ちをする。
「……ったく、まだかよ。遅せぇな豚共。」
「きゃぁああ!」という悲鳴が病院内に響く。
あまりの大きさと慌ただしさから目を覚ました遊佐は窓からその悪夢とも言える光景を目にしては目を見開く。
「あそこは新選組本部……!」
新撰組本部に突然の強襲――と事は、この事態は明らかに『生命の樹』が引き起こした事になる。
(これは大人しくおねんねしてる場合じゃないだろうね……)
繋がれた点滴や、装置などを全て引きちぎっては、そのまま病室を飛び出す。この騒ぎであれば病人が1人病院から抜け出してもバレやしないはずだ。
そうして遊佐は走る 自身の成すべき事の為だけに
比企がパトカーに乗り込んで、現場を見てみれば正にそこは地獄であった。
死屍累々と積み上げられた死体を台に女が座っては、刀の手入れをしている。その状況を見て、比企は指示を出す。
「第5部隊はこのまま引き返し、連絡に移れ。増援の指示があれば20分以内に現場へと引き返せ!ここは第2部隊と第3――」
ガキィンッと刃と刃が交わる。
指示を出している間に根城は距離を一気に詰め、比企へと刀を振りかざすが、比企もまた刀を抜き、応戦する。
「へぇ、中々やるじゃねぇか。新選組は遊佐と斎藤の一点張りかと思ったが、そうでもないらしい訳か」
「まぁそういう事だから。甘く見てもらっちゃ困るよ」
同時に背後から斎藤が気配を出す事もなく斬りこむが、あっさりと回避され、一気に根城を中心に囲む。すると、母禮の姿を見ては口を開く。
「なぁ、大鳥母禮。今すぐその傾国の女を渡せ。そうしたら引き返してやるよ。」
「お前は、さっきの……!」
明らかに先程とは違う口調だが、コツコツと母禮の元へと歩み寄る。
「ウチの頭領からの命令だ。私らはその傾国の女に用がある……アンタも聞いただろ?それに私ぁアンタを傷つける事はできねぇんだ。だからさ」
ヒュンッ、というたった一振りで大半の隊員は攻撃をまともに食らう。
「……最も」
恐らく第2撃。間髪入れずそのまま刀を振ったのか、第一撃を食らった者も皆、バラバラに斬り刻まれては地面に落ちる。
「それでも私がここで引くワケねぇけどなぁッ!ほら、ほら、ほらほらほらほらぁッ!もっと私を楽しませろ!でないと、ただの肉塊になっちまうぞぉッ!?」
母禮へと向けられた一撃を斎藤が防ぎ、今度は比企が懐へと入った瞬間だった。
「テメェに用はねぇよ」
「がッ……」
遠心力をたっぷりと使い、そのまま柄を比企の肋骨へと打ち込んでは、比企の身体はノーバウンドで飛ばされる。
「比企さんッ!」
「大鳥!よそ見をするな!」
斎藤の呼びかけで我に返ってはガキィンッと間一髪で攻撃を防ぐが、鍔競り合いとなって、母禮はどんどん押されていく。
「いいのか……ッ?こんな勝手な事をして……!」
「ああ、そりゃあ勿論。私は1度アンタを送り届けた。だが、それ以降の接触に関しての命令は受けていない。だとしたら、用があんのはその傾国の女だけよ」
「ッッッ!」
ズ、ズと押し出され、キンッと棍棒の様に刀を上手く使っては宙へ放り出された瞬間に、刀の切っ先は相変わらず上を向いている。
「バイバイ。精々串刺しになって死んじまいな。」
「させるかッ!」
残り、負傷した隊士が根城へ向かうが、「だからよ」と呟いた瞬間、皆半径1メートル内から弾き出される。
「雑魚は引っ込んでろ」
生命の樹においての狼は低くそう囁いた。
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