第21話ahead


「……で、何でお前ら全員俺の部屋まで来た訳?」


 先程第8部隊は任務を終え帰ってきた為、休みたいというのが花村の意見だったが、事態が事態であり時は刻一刻と争うのだ。


なら仕方ないと、コンビニで買ってきた弁当を片手に「で?」と部屋に集まった比企、斎藤、南條、アマンテスは質問を投げかける。

「まず、粒子型高速光線砲ってなんだい?花村クン」

「あ?そんなの名前の通りだよ。」

「それだけで分かるか、この阿呆。」

「うるっせーな、このクソガキ。まぁ簡単に説明すると、だ。」


 もぐもぐと食べていたコロッケを飲み込んで、花村は説明する。

「ただの光線と言いたい所だが、詳しくは電子と粒子を掛け合わせたモンってのに近い。そもそも、電子は素粒子によって構成されている。本来ならば、それを光線として叩き出す前に分解しちまうが、敢えてそれを逆手に取って、分解された粒子を電子の波形を設定し、強制的に叩き出す事で適う技だ。だが、光線を安定させるには磁力も必要となるからな。だから多分そいつは磁石を入れた金属板を使ってたはずだぜ。で、拳銃の弾が効かないのは憶測だが、空気の回旋が妥当だろうな。」

「空気の回旋?」

「わざと空気中の窒素やそういった成分を1枚の盾にして、攻撃を食らうと思ったその時に僅かに重力と空気の回旋を起こして、対象物とぶつけちまうっていう論理だ。」

「だとすれば、相手は超能力者だとでもいうのか?」


 確かに説明を受けただけだと見てくれは、超能力者だろう。確かに間違ってはいないかもしれないが、南條はアマンテスに指摘する。

「いや、違うよアマンテスクン。花村クンが最終的に言いたいのは、それをどこかで作動させる何かがあるっていう話だ。これは僕の予想だけど、相手はその能力使用において多大な演算能力を使用している。だとしたら、それは人間の脳じゃなくて、機械の方が精密にできるよね?」

「つまり、アイツは機械操作で全ての現象を起こすように設定したのか。」

「そういう訳よ。大体分かったか?」

「ああ、疲れた中説明ありがとう。」

「そりゃーどーも。但しトリックが分かったとしてソイツと戦う時、どう相手すんだよ?」

「決まっている、叩き斬るのみだ。」

「あのなぁ……斎藤」


 1度手を付けていた弁当を置いては花村は言う。

「いいか?科学ってモンは超能力はまだしもヘタすればこの世の物質全てを味方にできるようなモンなんだぜ?そうしたら、お前は自分で自分の首を絞める事になる。つまりは無駄骨だ。母禮を守り通したいのは分かるが、少しは頭冷やせ」


 斎藤はぎりっ、と歯を食いしばり、衣服を掴む力も強くなる中、誰もが斎藤の無念に同情した者は多いだろう。指摘した花村でさえも。


 だが、どうすればいいのだろうか?


 物理的な刃が通用しないとなれば、ここ新選組に所属する者は皆、高杉影踏を踏破できないという訳であるが、しかしこの場で最もイレギュラーな少年は笑う。

「その役目、俺が買ってでようじゃないか。」


 無法で対処できないイレギュラーがあるならまた別のイレギュラーをぶつければいい

「俺も形は違えど特殊な能力を持っているのだからな。」

「……って事は残った俺達は、残りの生命装置の破壊と薄気味悪いねーちゃんと高杉を片付ければいい事になったぜ。」

「アマンテス、すまない。」


 斎藤はアマンテスの方に向かって、一礼するが、「ふん」と軽く鼻であしらわれた。

「礼などいらん。そもそも俺は日本政府から依頼を受けてここまで来たのだ。それに母禮は長年の友人の様なものだ。どちらの理由を取るにせよ、これは俺の成すべき事だ。」


 そう言い張ったアマンテスに対し、花村は「まぁな」と呟く。

「少なくとも土方さんから指名は来ると思うぜ。俺も呼ばれると思うけどな」

「やっぱり花村も呼ばれるのか。全く恐ろしいよ」


 比企は苦笑してから、一言嫌味かそれとも善意か分からない不確かな言葉を口にした。

「自分で自ら身体弄るんだから。俺らには全く理解できないよ」



 カタ、とフォークを置き立ち上がる樹戸と目線が合うと同時に母禮は言葉を向ける。

「いいだろう、応じてやる。」


 すると樹戸はにこり、と笑っては言う。

「そう言ってくれると非常に助かるよ。これ以上あいつの我侭で体調も崩したくはないのでね。さておいで、案内しよう。」


 母禮もまたガタッ、と席を立ち上がり樹戸に案内され立ち止まった先はとても大きな宮殿のような場所だった。これには流石の母禮も驚きを隠せない。

「一体ここは……」

「それも、あいつに聞いてみるといい。」


 樹戸が答えると同時に開いたドアの奥で声が響く。

「よう。大鳥母禮……いや、大鳥沈姫。歓迎するぜ。無論、似た者同士な。」

「……高杉、灯影。」

「それでは、ごゆっくり。」


 ギィ、と閉まったドアの前で止まっていれば、奥から高杉が呼ぶ。

「何してんだ?折角歓迎してんだ、こっちに来いよ。」

「今向かうさ」


 息を吸っては、吐き出す。

 心に覚悟を決めては、大きな階段を昇り、昇りきったその先には、ぽつんと小さな白いテーブルと同じく白い木製の椅子、小さな箪笥があるだけだった。

「味気ねーか?」

「いや、少し驚いただけだ。」


 相変わらずの軽い調子に合わせて話せば、椅子に腰掛けたままくつくつと喉で高杉は笑う。

「あまり派手なのは好きじゃねーんだ。樹戸さんから場所の取りすぎだって言われるが、俺様はこれでいいと思ってる。」

「……」

「そんなに聞きてーか?俺様が新撰組を抜けた事」

「ああ」


 重くそう頷いては、横に合った小さなタンスの上に置いてあるカップを母禮の元に置いては、紅茶を注ぐ。

「かなりの長話だ。退屈だろうから、茶は受け取って置きな。」


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