第18話Out of the frying pan, into the fire
そう言って、役員全員が立ち上がり、ぞろぞろと部屋から出ていき、アマンテスと2人きりになった瞬間、ガンッと思い切りテーブルを叩く。
「クソったれがッ!ロクな仕事しねぇ癖に責任だけは押し付けやがって!!」
「仕方あるまいよ、土方。政治とは何かとこういうものだと相場が決まっている。」
「つかテメェも俺より10歳以上も歳下なんだってな!?なのにタメ口聞くわ、人をコキ使うわ、少しは敬え、称えろ、崇めろ!」
「そうそう、その調子その調子。」
「ふざけてんじゃねぇぞ!ガキ!!」
「ふざけてなどいないさ」
「あ?」
突然聞こえた真剣な声に、声を漏らせば。アマンテスは言う。
「俺は俺なりにこうしているんだ。俺がしっかりしていれば、部下は忠実でいられるか?その問答はノーだ。ただ普通の態度では嘗められて終わる。丁度子供の様に我が儘なフリをしておけば、部下も誰もが諦めてくれる。だからこそ俺は常に芯ではしっかりしておくようにと心に決めているんだ。」
「テメェ、まさか……。」
「自分を偽ってもう7年。いい加減慣れた。俺は俺の道を行くが、今回ばかりは協力させてもらおう。これが世界と奴らの全面戦争になる前にな」
「……言うじゃねぇか」
すると、ガシッとアマンテスの頭を叩いては土方は言う。
「よろしく頼むぜ、相棒。」
「ああ、よろしく頼むぞ。」
「んで、だ。さっきの会議で気になった事がある。」
「霊脈の事か?」
「ああ。テメェさっきすんなりと滑らかな具合で言ってくれたからよ、あの老いぼれ共は見落としたみてぇだが、霊脈からちゃんと場所も指定してあるって、どこだ?」
「予知能力は携えていないんだがね。ただ、ここで大きなビルはないだろうか?」
「ビルだと?そんなモン多すぎて逆に絞れねぇぞ」
「いや、それこそシンボルとなるものだ。東京タワーが吹き飛ばされた今、それ以外にシンボルとなるビルはどれだ?」
「まさか……」
土方は確信した。もしこの読みが当たっていたとすれば、今度こそ日本は終りを迎えるのだと。
「場所は?」
「北千住から東武スカイツリーラインの終点地、東京スカイスリーだ!」
コンコン、と無機質な病院のドアをノックすれば「どうぞ」と声が響く。
「遊佐さん、大丈夫か?」
午後4時半、ようやく一通りの手当を終えたという事で、母禮と斎藤は遊佐の見舞いに来ていた。残念な事に重症になった隊士、亡くなった隊士も多いらしく少し落ち込んだ様子の母禮に遊佐は声をかける。
「嫌だなぁ、そんな顔して。僕なんか現場でモロ被害を受けたんだよ?でもさ、僕も含め、新選組の全員は常に命懸けなんだ。命を落とす事が生きがいだとか幸せとは言わないけれど、覚悟はしているから。」
「……すまん」
「もういいってば。それに2人に怪我がなくてよかったよ。……で、さ。土方さんが『生命の樹』の居場所の特定をしたって聞いた?」
「……ああ」
先程まで遊佐が必死に守り抜いた雰囲気だったが、ここで一気に落ちる。母禮が再び俯き、その頭を斎藤が優しく撫でている。
「東京スカイツリー……だってね。全く、どんな神経であんな所を本拠地にするのか……」
「正気ではない事は確かだ。だが、それもアイツらしいな。」
「ちょっと待ってくれ、斎藤さん。アイツらしいって言ったが、知り合いなのか?」
その問いかけに対しては遊佐が口を挟んだ。
「ねぇ、れいちゃん。新選組のトップって見た事ある?」
「? 見た事ないな。」
「でしょ?それに僕は出会った最初の日に言ったよね?ここは階級によって部屋の階が違うって。最上階の24階には土方さんと、オーナーの三木さんしか住んでない。だとしたら、トップの人はどこで寝て生活しているんだろうね?」
「あ、という事はつまり……。」
「そう。あの『生命の樹』リーダーである高杉灯影が前まで新選組のトップにいたんだ。」
「一体、何で……。」
「その事に関しては誰も真相を知らないんだ。僕達幹部でもね。あまりにも突然の失踪だったから、最初も上は騒いでたけど、1ヶ月経つ頃には上も放っておけ、だって。ホントに笑えないよね。」
「だが、これで本拠地が分かった以上、ここから先は俺達と奴らの全面戦争となる。その時まで遊佐、アンタも復帰できていればいいんだが……。」
すると、遊佐は普段の様に少年の如し笑って「勿論」と答える。
「その時までには必ず戻る。僕だってあの失踪の真実を知りたいしね。勿論指名されると思うけど、所以さんも出るでしょ?」
「ああ」
「だとしたら今は、あの人に任せようか。……と言うかあの人の仕事ってこんぐらいしかできないしね。」
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