第16話meddling


 そう言い残しては電話が切れる。

「……」


 考えて暫く。

 すぐ様着替え、 バタンッ、と外へ飛び出しては、24階まで階段を昇り、土方の部屋のチャイムを鳴らせば「あ?」と如何にも機嫌の悪そうな土方が出てきた。

「何だ、大鳥。さっき指示を出したろ、作戦は――」

「それが大変な事態なのだ!どうか東京駅まで車を回してくれないか?一々説明するより、一緒に聞いて貰った方が早い!」

「ハァ?まさか今回の作戦に関してじゃねぇだろうな?」

「それに深く関与しているのだ!どうか頼む!」

「なら、少し待ってろ。」


 と言い残しては、内線で予備隊を呼び出してはそのまま車を回してもらい、東京駅へと急ぐ中で土方は「なぁ」と言葉を投げかける。

「その迎えにいくヤツってのは何かの権力を持ったヤツなのか?」

「ああ。あの義兄上の問題で、あのオカルトを全て解説してくれた人なんだ。聞く所によれば、欧州で相当の権力を持つ魔術結社のボスだそうだ」

「魔術結社、ね。」


 軽くぼやいては東京駅へと急ぐ。そして、1時間後。結構時間は経ったが東京駅に着いては、母禮は必死にアマンテスを探していれば、丁度こちらへ向かっているのを見ては、「アマンテス!」と叫ぶ。

「よう。思ったより早かったな」

「まぁ、上司に無理してお願いしたからな。早く車に乗ってくれ」


 母禮にそう促されると、土方は「早かったな」と言っては、アマンテスへと視線を向ける。

「テメェが大鳥の言っていた魔術結社のボスか?」

「母禮から聞いたのか?まぁいい。俺は魔術結社『地を這う蛇』のボス、アマンテス=ディ=カリオストロだ。」

「こちらは新選組の大隊二課長の土方だ……で、その大事な話とやらを進めようじゃねぇか。大体テメェは何で日本に来た?しかも日本国内だけの問題に、どうして他国がちょっかいを出す?」

「簡単な話だ」


 そう区切っては更に話を進めていく

「『生命の樹』は元々融合結社だ。科学者や不良だの外国人だのといる中で魔術師も結構いると部下から聞いている。ちなみに貴様はさっき日本国内だけの問題と言ったが、実を言えば俺はここ日本政府に依頼されここまで来たのだ。目的は『生命の樹』の壊滅。俺も科学にはほぼ無知であるが、生命装置とやらにも危険な要素が多くあってな。もしかしたらもう奴らは動いているかもしれんぞ。」

「何……?」


 眉を顰め、声を低くする土方に対し、アマンテスは告げる。

「もう、この瞬間にも……だ。奴らの最終目的は世界への進出だけでなく、魔術・科学両方の道を使い、世界を動かそうとしている。5000人と人数だけ圧倒だけならまだしも、絶対者が数人いるだけでも組織自体は変わるのだ。」

「否定はしねぇよ。ただ、テメェもこちらに協力するって形でいいんだな?」

「ああ、そこは任せるがいい。呼べというのなら欧州全土から全魔術師を派遣しても構わん。」

「ハッ、そりゃぁ心強いモンで。」

「だから教えて貰おうか。この作戦というものを」



 ガシャ、ガシャと隊列は東京タワーの近くの駐車場の辺りでバスを盾に第1部隊の隊員は東京タワーの様子を見ていた。


 今回は重要作戦である為、剣客隊だけでなく銃撃隊も戦線に控え、遊佐は突入の合図を見計らっていた。


 現在時刻は午前4時24分であり命令であった、4時30分までは待機しているのだが、遊佐は思う。おかしいと。

 誰もいないのは当然だが、ここが本拠地であるならば、もう少し警戒があってもいいはずだ。しかしここまでないとなると、やはりいるのかもしれないという葛藤の中、1分1秒と、待つ。


 そして、午前4時30分。

「突入!」


 入口を破壊した後、出入り口を完全に封鎖しては、各階へと登っていく。

 ここは2階に水族館を備え、水族館のすぐ横には大型エレベーターがあり、そこから第1展望台、更に上にあるのが最上展望台。狙いは第1と最上までの間だと予測し、そのまま階段を駆け上がるが、どこにも人などいなかった。

「隊長、現在ここ1階から最上階までは人がいないとの報告が……」

「なら、第1展望台から最上階までに何か仕掛けがないか探索して」

「はッ」

「遊佐隊長!」


 一方、無線で連絡が入り、「何?」と答えればチッ、チッ、チッという不吉な音がノイズと共に混じる。

「只今爆弾らしき物を――」

「全隊員に告ぐ!!すぐさまここから撤退し――」


と言うと同時に、この東京から、東京タワーが消滅した。


「東京の方はどうにかなったようですね、樹戸さん。」

 場所は京都の比叡山延暦寺の鳥居の中。ここで配備されていた警備員と僧侶らがあたり一面血の海の中に沈んでいる。

 そこを何もなく歩いてゆく長身の女は通信を続ける。

「日本の霊脈の一部の解放……果たして、これには一体何の意味があったんでしょうね?」

「仕方ないだろう。灯影の持つアレと生命装置をこの国全てに影響させる為には必要な事なのだ。」

「成程。で、もう全て制圧したという事で構わないんですか?」

「ああ。二条城、金閣寺、比叡山延暦寺と京都の3つの霊脈は確保した。残るは東京。後は何事もなくこちらに帰って来てくれれば何も問題はない。」

「了解しました」


 ピッ、と通信を切っては女は歩きながらも呟く。

「こっから迷走が始まるってかぁ?ハリー、ハリー、ハリー!全てぶっ殺すまで楽しみで堪らねぇよぉッ!」


 凛とした声音と裏腹に吐き出された汚れた言葉は京都の空に消え、一方東京にある新選組本部では戦慄が走っていた。

「只今のニュースで、午前4時半頃……2時間前です。先程、東京タワーが爆発されたとのニュースが――……」

「なん、だと……?」

「……早めにと俺も先手を打ったが、向こうが更に先に先手を打っていたとはな。」


 日本で前代未聞の大ニュースは午前6時に流れると、同時に、時代も傾いた。


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