第2話Chance meeting
「何だ?物捕りか?」
「んなワケないだろうがッ!」
少女は首を傾げて答えるが、これは割と本気である。社会的常識はあるものの事件等に関しては疎く、現代の事件も詳しい事は何1つ掴んではいなかった。
すると、突然暗闇の中からザッ、と足音が聞こえ、物音のする方へ目線を向ければ「おや?」という明るい声が響く。
黒を貴重とした軍服の右腕の腕章には赤いダンダラ模様が施されている。これが彼らを表す唯一の印であり恐怖の対象。何があったかは分からないがこの男達も何ならかの事情があって追われているのだろうが、やはり無視などできやしなかった。
これが大鳥一族としての呪いであり諚。
「おい」
「はいィイッ!?」
逃げ腰の男二人に声を掛けては、腰に下げていた十字架を抜く。
「おれが時間稼ぎをする。後は言わなくても分かるな?」
「す、すまねぇ!!」
すると、隊長各であろう青年は虫でも見るかのような目線を向け、男達を見逃してはつまらなそうに「あーあ」と呟く。
「全く……お兄さんが邪魔するから逃げられてしまったじゃないですか……結局さ」
と言えば、周りにいた4人が刀を抜き少女を囲む。
「職務上、こんなのはよくないんだろうけど、あまりにもお兄さんが強そうだからこっちの方が有意義だと思って選んだんだけど。まぁ、逃げなかったお兄さんも今この場で後悔してください。時間ならたくさん与えますから」
にこり、と笑ったまま少女の正面のその奥で青年は笑いながら、まるで罰を下す役人の様に呟くが、どうみても普通と言えるような人間の言動じゃない。が、それでも少女は怯まずに心中で人数を確認する。
(4人か……多いな。だが)
スッ、と十字架を剣の様に構えてははっきりとこう告げる。
「来たれ、『大鳥』に対する狼藉は高いぞ」
「お、大鳥……?」
その瞬時に隊士達の顔色が変わっては、誰もが呟いた。
「馬鹿な。奴は逃亡中なんだぞ!?」
「余所見とは」
一瞬の躊躇いに容赦なくまず前にいた2人を抜き去ると同時に肩を切り崩そうと懐に入り、十字架を振り下ろす。
「余裕か?」
「がっ!?」
声を上げ倒れる隊士が丁度斜め背後から斬りかかり、正眼の構えから刀を振り下ろすが、易々と避け、カチッと刃を裏返す。
そのまま左肩に峰打ちをすると最後の隊士を何もなく斬捨てては青年を見据える。
「奴らが何者だか知らんが、これは掟だ。相手が新撰組だろうと排除させてもらう――」
「あ」
青年の突拍子もない声 それを繋ぐ様に辺りに声が響く。
「甘いんだよ!小僧がッ!!」
先程逃げたはずの男の1人が隠し持っていたブラックジャックを振り下ろした瞬間だった。
「失せろ」
凛とした声と同時に宙を舞う鮮血。男がドサリ、と倒れた瞬間に少女の瞳に映った男は正に――
(この男は――)
思い出すあの日の悪夢。両親を亡くしたあの悲劇を
少女が、青年に見とれている中で、先程の青年は「あー、もう!」ともう1人の青年の近くに寄っていく。
「所以さんってば、来るの遅いって。」
スローな声に振り向き、所以と呼ばれたその男は刀を収めては平然と呟く。
「別に俺がいなくともアンタらだけで処理できただろう。それにアンタの事だ。どうせそいつと戦いたかったんじゃなかったんじゃないか?」
「まぁね。けど色々と理不尽な事が混ざってるの分かって言ってる? ……ああ、それとお嬢さん」
先程まで他所者とされていた少女に声をかけては少女は肩をビクリと揺らし一言。
「何故おれが女だと分かった?」
「何でって……まずその筋肉のつき方はどう見ても男じゃありえませんし、骨格も幾分か柔らかい。水泳とかやってたんですか?それで筋肉を平等につけたからと言ってそうはごまかせませんよ?それと、偶然にもこうして出会えた訳だし、そっちから接触してもらえると助かるんですが。」
「……」
つまりは、「共に来い」と新選組の隊長各は言っている訳であり、少女はその問いにすぐ様答えた。
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