第四話 奴隷の少女

建て直し


 ホルグとの戦いを終え、ボロボロになった家である小屋へ帰るイルザ達。




 幸いにも火柱が経ったのは玄関部分だけで、それ以外は床や天井が炭になっている程度だった。




 エルザの水魔法のおかげで全焼は免れた。




 「こりゃ玄関は造り直しだな」




 「ええ・・・。あとは燃えた床と天井も張り替えなきゃ」




 イルザとグレンは被害状況を確認し、どの部分を造り直すか、どこを張り替えるか検討していた。




 「でも温泉は無事でよかったわ。お風呂に入れなかったら死んじゃうところだったわ」




 「はぁ? 風呂くらい湖の水で何とかなるだろ」




 「それじゃあグレンは今日から温泉じゃなくて湖で身を清めてよね」




 「すんません。温泉超大事ッス・・・」




 痴話げんかを時々挟みながら、修復用の設計図を作成する二人であった。










 一方エルザは、森に張ってある魔獣除けの結界の張り直しをしている。




 ホルグが襲撃してきた際、張っておいた全ての魔獣除けの魔法石を同時に破壊されたのである。




 「・・・面倒なことをしてくれたわ」




 麻袋から予め精製しておいた魔獣除けの魔法石を取り出し、地面に埋める。




 大地に流れる魔力“オド”が魔法石へと流れ、地面に埋めるだけで効力を発揮する。東西南北、ひし形上に設置することで線を結ぶ様に結界が張られる仕組みである。




 「・・・南は終わり。最後は西ね」




 土にまみれた手を払い西へと歩き出す。




 いつ魔獣が出現するか分からないので、右太ももに身に付けている杖のホルスターに手を掛けながら森を進む。




 「・・・お腹空いたわ」




 エルザの腹の虫が森に響き渡る。




 好物のオグリの実が近くに実っていればその場で空腹を満たせたものの、イラエフの森西側に魔界樹はあまり生息していない。




 「・・・早く終わらせて、姉さんに焼きオグリを作ってもらおう」




 はぁ・・・、と燃費の悪いお腹を押さえながら深くため息を吐く。










 西側の設置地点へしばらく進んだ頃。森の木々が大きく揺れ始めた。




 この傾向は魔獣の出現、しかも暴れていることを示す。




 結界を張る前に退治しておかないと、結界内に知らずに入り込んだままになる。寝込みを襲われたらたまらないので、先に退治する必要がある。




 「・・・ちょうど設置地点付近ね」




 エルザは索敵魔法を素早く展開し、魔獣の位置を確認する。




 「・・・? もう一体何かいる?」




 魔獣とも魔族とも違う反応を察知したエルザは不審に思う。




 警戒を強めて魔獣が暴れている地点へ逃げられる前に急ぐ。






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る