第23話 勉強の誘い

「……と言う訳で、来週には定期考査だ。各自気を引き締めて、自主勉などを行うように」

 先生が話していた話を思い出していた。来週の水曜日から定期考査だ。それに学期末である為教科数も多い。授業をまともに受けていれば赤点をとることはないので、俺はある程度の点数は取れるのだが、高得点を狙うなら、自主勉強をしなくてはならない。定期考査からちょうど一週間前の水曜日の放課後、俺が帰宅の準備をしていると、寧々が扉を開けてやってきた。今日は委員会もあり、帰りが遅くなっていた為、クラスには俺しか居なく、扉を動かす音はよく響いた。

「こんにちは優斗くん。今から帰りですか?」

 寧々の言葉に、俺は「そうなんだ、委員会があって」と返答すると、寧々は嬉しそうに微笑んだ。

「私も丁度用事がありまして、今帰ろうとしていた所なんです」

 寧々はそう言ってこちらへ寄ってきた。俺はその行動に可愛らしさを感じ、その事に恥ずかしがっていると、寧々が不思議そうにこちらを覗き込んだ。

「優斗くん?どうしたんですか?」

 なので俺は、覗き込む寧々から視線を外し、話題を変える事にした。

「それはそうと、寧々は大丈夫か、定期考査」

 俺が質問すると、寧々は胸を張り、自信満々に言った。

「はい、大丈夫です!これでも私、順位は高い方なんですよ!」

 各人の順位が表に公開されない学校な為、寧々が何位なのかは分からなかったが、まぁ予想通り(・・・・)良い順位のようだ。そして寧々は「優斗くんはどうなんですか?」と聞いてきたので「真ん中ぐらいだよ」と言うと、寧々は楽しそうにこう言った。

「じゃあ、私と一緒にお勉強しませんか?」

「勉強?」

俺がおうむ返しをすると、寧々は元気よく頷き、話を続けた。

「はい!次のお休みのどちらかに、図書館でお勉強をしようと思いまして、良かったら一緒にどうですか?」

 寧々にそう言われ、俺は少し動揺しつつも、首を横に振った。

「いや、良いよ。しっかり赤点じゃない点数は取っているし、問題ないよ」

 誘いを俺が断ると「そうですか……」と、少し寂しそうにしながらも笑って、会話を進め、一緒に家へ帰った。

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