第22話 最初の調査

「いらっしゃいませー」

 入口の自動ドアから入店の音が鳴ると同時に、店員に入店を歓迎される。

「あの、すみません」

「はい、どうなさいましたか?」

 寧々は、入店してすぐ、品物を出していた店員に話しかけた。

「えっと、店長さんは今いらっしゃいますか?」

 その言葉に、店員は「店長ですね。呼んで参りますので、少々お待ちください」と言ってスタッフルームに入って行った。

「よかった、店長さん居るみたいですね」

「そうだね」

「お待たせしました」

 俺達が一安心していると、コンビニの制服を着た、背が高く眼鏡を掛けた人が、話し掛けてきた。

「貴方が店長さんですか。すみません、お話があるのですが、少しお時間をもらえませんか?」

「はぁ……大丈夫ですよ。そのお話とは?」

 店長は、少し違和感を覚えたようだが、快く話を聞いてくれた。

「篠倉彩についてです」

「……裏に来てください。長い話にはならないとは思いますが、暗い話にはなると思うので」

「分かりました。行きましょうか?」

「分かった」

 俺達は店長の指示に従い、コンビニのスタッフルームに入った。

「こちらに座ってください」

 店長は俺達にキャスター付きの椅子を出してくれた。俺達が「ありがとうございます」と言うと、自分は新たに出したパイプ椅子に腰かけた。

「それで、篠倉さんの話とは?」

 真剣な声音で店長が言うと、寧々は少し表情を硬くしながら言った。

「はい。私は、彩について調べています。その為、彩が通っていた色々な場所に話を聞くことにしました。なので、彩が働いていたここに、話を聞きに来ました」

 寧々の言葉に、店長は特に表情を変えずに「悪ふざけではないんですね?」と聞き、寧々はその言葉に深く頷く。すると、店長は少し溜息を吐き、意を決したように話し始めた。

「と言っても、私から話せることはあまりありません。篠倉さんは亡くなってしまう一か月ぐらい前から来ていませんでしたから」

「そう、なんですか?」

 寧々が目を見開きながら口にすると店長は「えぇ」返答し、続きを話した。

「そこからはSNSでも電話やメールでも、もちろん実際にも一切話していません。バイトに来ていたころは、皆さんの知っている通り明るい子でしたので……」

 店長は少し申し訳なさそうに下を向きながら言うと、寧々はその空気を読み、明るく返した。

「いえ、助かりました。やはり一か月前に何かあったのかもしれません。お話してくださり、ありがとうございました」

「いえ、大した事は話せませんでしたし……余計なお世話かも知れませんが、あまり危ない事はしないでくださいね?」

 店長から大人としての忠告をされ、俺達は「はい」とその言葉をしっかりと受け取った。

「せっかくですし、何か買っていきますか?」

「そうだね」

 スタッフルームから出た後、俺達は話を聞いただけで去るのもどうかと思い、買い物をすることにした。

「新しい情報はあまりなかったね」

「そうですね。でもやはり一か月前に何かあったみたいですね」

 寧々にはその情報は意味があったようで、小さくても確かな一歩と思っているようだ。

「次はどうしようか?」

 俺が食パンをカゴに入れながら質問すると、寧々は少し考えつつ首を振った。

「まだ次は決まっていません。なぜなら……」

「なぜなら?」

 寧々は、真剣さと微笑みを半分ずつ含んだような表情で俺を覗き込んだ。

「なぜなら、定期考査があるからです!」

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