第21話 呼びかけ(寧々視点)

「ふぅ……」

 私はこれから、彩がバイトをしていたコンビニエンスストアへと向かう事に少し緊張しながら、優斗くんが来るのを待っていた。

「……咲蕾さん、何をしているんですか?」

「あっ、新田くん」

 私が声を掛けられた方に顔を向けると、そこには穏やかな表情をした新田くんがいた。

「えっとね、私達、これから近くのコンビニエンスストアに行こうと思ってて」

「コンビニですか。良いですね、俺も付いて行っていいですか?」

 それを言われた私は、あまり会話したことがないのに付いてくると言われ、少し動揺しつつも、首を振った。

「ごめんなさい、私、そこで少し大事な用事があって……」

「それって、どんな用事なんですか?」

 ズカズカと入ってくる新田くんに恐怖を覚えた。だが、いつかの周りの人達のように、私の事を心配して言ってくれているのだろう。最近はお母さんや友達に言われた通り明るくなったらしく、心配されることが少なったけど。その為、私は心配を掛けないように彩の事は言わず、はぐらかすことにした。

「ごめんなさい言えません。私事なんです。あまり気にしないでいただけると……」

「それって、優斗関係ある?」

 口調が変わった。そして表情には怒りのようなものが現れた。私にはその意味があまり理解出来なかったが、取り敢えず返答をした。

「優斗くんはただのお友だちです。関係はありません。それが何か?」

「……っ、そうかよ。いや、そうでしたか。すみません、でしゃばった真似を」

「いえ、そんなことはありませんよ?」

 新田くんは私とそんな会話をしながら去って行った。いったい何故突然そんな話をしたのだろうか?そして、どういう意味で優斗くんの事を出したのだろうか?

「ごめん。遅くなった」

そんな時、優斗くんが少し小走り気味にやって来た。

「いいえ、待ってないですよ」

私は、考えている事を振り払い、明るく優斗くんに返答した。

「そう、なら良かった」

「えぇ、それじゃあ行きましょうか」

 私はもうその時、新田くんの事は思考から居なくなっていた。

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