第20話 最寄りの目的地
「土曜日は何処に行こうと思っていたの?」
休み明けの昼休み。俺は食事をしながらSNSで言っていた事を、寧々は箸を止め、返答した。
「彩が働いていたバイト先に行こうと思っていました」
「バイト先か。確かに、働いていたなら色々な人と関わっただろうしね。どこで働いていたんだ?」
「えっと、近くのコンビニエンスストアです」
ふざけ無しでコンビニの事をフルネームで呼ぶ人初めて見た。俺はそんな関係のない事を、頭のどこかで考えながら、俺は寧々の返答に頷く。
「どうする?俺は先一か月ほど予定ないけど」
俺の発言に寧々は悩ましげに首を傾けた。今月は祝日がない為、休日は土日のみである。だがほぼ暇な俺と違って、寧々は忙しい時もあるだろう。
「寧々の空いている日で良いからな。俺も大体はいつでも良いから」
「あ、うん、ありがとう、優斗くん。……じゃ、じゃあ、今日の放課後、なんてどうでしょうか?」
随分と早かった。まぁ特に予定もないので「了解」と言って、食事を再開しようとしてその時。
「あっ、お兄ちゃん!」
と、ここでは聞こえるはずのない声が聞こえた。
「美夢?」
俺は、まさかと思いつつ声が聞こえた方に振り向くと、そこには何故か、何故か美夢の姿があった。
「なんで美夢がここに?」
俺は動揺しつつも冷静に質問すると、美夢はしてやったりと言った表情になったが、すぐにムスッとした表情に変わり、トコトコと歩いて来た。
「こんにちは、お兄ちゃん。それと……」
そう言って美夢は寧々の方を向く。少しだけ怒りのようなものを感じた。寧々はその怒りが何故自分に向かっているのかを理解出来ずに、取り敢えず挨拶をした。
「えっと、初めまして。私は咲蕾寧々って言います。あなたは優斗くんの妹さん、なのですか?」
寧々はとても丁寧に挨拶をするが、美夢不機嫌なままむしろ怒りを増していた。
「優斗くん、ね……ま、良いですけど。私は佐久良美夢です。どうぞよろしく」
美夢がぶっきらぼうに言うと、視線をあまり合わせずに会話を続けた。
「今日は学校見学で来ました。もう帰る時間なんだけど、お兄ちゃんに挨拶をしてくるって言う事で会いに来たんだよ」
「そ、そう……て言うことはもう帰りか、気を付けて帰れよ」
そういうと美夢は嬉しそうに「うん!また家でね!」と微笑み、去って行った。
「あの、私、何かしましたか?」
「さ、さぁ?」
このなぞも解けないままであった。
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