第17話 次の目標

 そんな事があってから一週間ほど経った頃。あの中庭で昼食を取っていると、隣にいた寧々が、話し始めた。

「優斗くん、私、彩の日記を読み終わりました」

「おぉ」

 俺はその発言にどう反応すればいいか分からず、取り敢えず対応して、続きを促す。

「それが……あまり有力な情報はありませんでした。一か月前からもあまり感情が変わったような書き方はありませんでした」

「そっか……」

 それは残念な報告だった。有力な情報がなければ、これからどう行動すれば良いか分からない。最悪ここで終了と言うこともあり得るだろう。俺がそんなことを危惧していると、寧々もそれを感じ取ったのか、首を振って言葉を続けた。

「でも、新しい情報を入手しました。これです」

 そういうと、寧々は一つのスマホを取り出して見せた。

「これは?」

 俺が訝しそうな目でスマホを見ていると「これは、彩のスマートフォンです」と言った。

「警察に押収されていたものが帰って来て、それを陸くんが届けてくれたんです」

 そして寧々は、前触れなくスマホを開くと、連絡履歴を見せてきた。

「これは彩が死んだ日の連絡履歴です。見てください、この番号だけ電話帳に登録されていないんです」

「ホントだ……まぁ普通に見ると怪しいよなぁ」

「ですよね、この電話番号、電話してみた所、現在使われておりません、だそうです」

「犯人が番号を変えたと、私は思いました。」

 俺は、その確率は高いと思った。他にも電話帳以外の番号から電話がかかることは想像出来るが、現在使われていない所が怪しさを引き立てている。

「でも、それなら警察も調べたんじゃないの?」

「それは、分かりません……ですが、手掛かりにはなると思うんです!」

 寧々は、少し俯いていた顔をバッと上げ、真剣な顔で言った。……この番号にすがっているのだろう。唯一現れたヒントを、彩さんが自殺ではないことを証明する為に。

「分かった。それで、これからどうする?」

 俺は寧々を手伝うと言ったので、ここで投げ出す事は無く、次の行動を話し合おうと言葉を振ると、寧々はこちらを見ていた瞳を一瞬揺らした後、気持ちを切り替えたのかいつもの表情に戻った。

「はい、これからは、この一か月間で連絡を取っていた所に、こちらから連絡をして、彩についてと、この番号について聞いてみたいと思います」

「なるほど、俺はどうすれば良い?」

「そうですねぇ……あの、迷惑でなければなんですけど、私が連絡した人と実際に会うときに、一緒に付き合ってもらえませんか?もちろん、出来る限りで大丈夫ですので」

「わかったよ。もしそうなったら言ってくれ」

 俺の返答に、寧々は嬉しそうに「ありがとうございます!」と笑顔でお辞儀をすると、二人弁当を食べ始めた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る