第15話 腕の痣
“その後腕はどうですか?”
夜の八時頃、俺はSNSで寧々と会話していた。寧々に腕の心配をされたので確認をすると、手の形に膨れ上がり、青々と変色していた。
「うわぁ……」
俺はそう呟きながら、SNSで“大丈夫”と返信する。するとすぐに既読が付いて、“それなら安心しました”と返信が来る。本当は大丈夫ではないのだが、そう言う嘘は許されるだろう。
“これから私は、彩の日記を読んでみたいと思います。これからの話はその後にお伝えします”
寧々の律義さが現れたSNSに、俺は少し苦笑いをしながら“了解”と返信をして、自室から出た。
「母さん、包帯ってどこかにある?」
階段を降り、リビングでテレビを見ていた母さんにその事を聞くと、母さんは訝しげに目を細めた。
「どうしたんだい?仰々しいわねぇ……何処を怪我したの、見せてみなさい」
母さんはそう言って、俺が隠していた腕を引っ張り出す。ズキンとした痛みと共に晒された腕は、手の後らしさは消えたが、青々とした
「どうしたんだいこの痣は!?」
母さんが出した大声は、家中に響き渡った。
「なに?あざがどうしたって?」
声を聞いて、美夢も自室からやって来た。
「えっ、お兄ちゃんこれ、どうしたの!?」
二人は終始大きな声で、質問をして来た。
「まぁ何て言うか、寧々に当たりそうになった物があったから、腕で防いだだけだよ……」
俺が言うと、母さんはニヤッとし、美夢はムスッとした。
「おあおや、男の勲章って言うやつかい?」
「お兄ちゃんに守ってもらうなんて、何て言うかうらやま……うらやましい!」
二人の発言を、俺は溜め息で返し、母さんにこの痣を隠すものと処置法をお願いした。
「取り敢えず炎症を抑えましょう。美夢、薄いタオルと保冷剤持ってきて」
「わ、分かった!」
母さんの言うことを聞き、美夢は少しドタバタ気味に薄めのタオルとちょうど良いサイズの保冷剤を持ってきた。母さんはそれを受け取り、保冷剤をタオルで包み、俺の痣の上に巻いた。
「冷痛っ!」
突然腕に様々な衝撃が走り、俺は少し動揺しつつも二人に礼を言った。
「ありがとう、母さん、美夢」
俺の言葉に、母さんは「後でシート持ってくるわね」と言って去っていき、美夢は「何かあったらすぐ私に行ってね」と、頼りになることを言って自室に帰って行った。兄として、妹に頼ることは矜持的にしたくないのだが、ありがたく気持ちだけ
受け取っておこう。俺はそう思って、冷やした腕を気にしながら自室へ帰った。
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