第11話 土曜日の話
「ただいまー」
俺が帰ると、半開きだったリビングの扉から「おかえりー」と美夢の声が聞こえた。その声と、リビングから漏れるテレビの音を聞きながら、手洗いうがいをし、室内着に着替えてリビングに行くと、美夢はソファの端っこに座っていた。
「お帰り。お母さん、もうそろそろ帰ってくるって」
「分かった。……そうだ」
「ん?」
美夢の言葉に返答した時、寧々の事を思い出し、土曜日の予定を伝えておくことにした。
「明日、一時半過ぎに外に行くから」
「どこ行くの?」
「駅で待ち合わせしてから家に行く」
「……それって誰?」
俺が土曜日の事を伝えれば伝える程、美夢の声音が
「美夢は中学生だから分からないだろう?咲蕾寧々って言う人だ。少し用事があってな」
俺は、彩については言わない方が良いと思い、その部分ははぐらかして言った。
「咲蕾さん位さすがに知ってるよ、有名だもん。……ふぅーん咲蕾さんと。それってデート?」
美夢の剣呑さはすごいものとなっていて、なぜ怒っているのか、少し動揺しながらも「いや、違うぞ」と言う。そうすると微妙に剣呑さが薄れたが、無くなった訳ではなく「部屋に戻る」と言ってリビングから出てしまった。
「ただいま……どうしたの美夢?そんなに怒った顔して、優斗ー?何かしたの?」
「何でもないっ!」
その時丁度帰ってきた母さんに、美夢は強く当たってどたどたと階段を上って行く。なぜ俺が外に行くと怒るのだろうか?母さんは帰宅直後に当たられ、少し気分を落としながらリビングに入ってきた。
「優斗、美夢になにしたの?」
「何もしてないよ」
俺が普通に返答すると「そう……」と少し考えながら言った。
「あっ、そうだわ。優斗、明日お買い物手伝ってもらえない?少し買い溜めしたくて」
「ごめん、明日用事があるんだ」
その言葉に母さんは「あら珍しい、どこに行くの?」と聞きに来た。
「ちょっとね、人の家に……」
「あら、誰と?」
「咲蕾寧々って人」
俺がそう言った瞬間、母さんは目を見開いて口を手で隠した。
「あらあら女の子!?デートかしら?」
「いや、違うって」
俺の言葉はもう母さんの耳には届いていなかった。
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