第6話 後ろ暗い気持ち

「あ、お兄ちゃんお帰り~」

 俺が自宅玄関の扉を開けると、棒キャンディーをくわえた薄着の妹、佐久良 美夢さくら みゆが顔を出していた。 俺は「あぁ」と返答し、靴を脱ぐ。そして洗面台に向かい手を洗うと、リビングから美夢が話しかけてきた。

「ねぇお兄ちゃん。飴玉、舐める?」

「なに味だ?」

 俺が手を拭きながらそういうと、美夢は驚いたような声を上げた。その反応に俺は困惑した。

「え、くれるんじゃないのか?」

 俺が確認するように言うと、美夢は慌てて返答する。

「あ、うん。あげる。あげるんだけど……お兄ちゃん、いつも断るじゃない?だからちょっと意外だったって言うか……ね?」

 そうだっただろうか。

「今日はちょっと考えることがあってな。頭をスッキリさせたいんだ」

 そう返すと、美夢は「ふーん、悩み事?」と聞いてきたが、さすがに内容が内容なので、「ちょっとな」と言って誤魔化した。

「それで、くれるのか?くれないのか?」

 俺はリビングに着き、美夢の座っているソファーに手を置いて聞くと、美夢は「はい」と数個の飴玉の入った袋をくれた。

「ありがとう」

 俺はそう言って二階の自室に行った。そして俺はすぐに自分のパソコンを起動し、『篠倉彩』について調べ始めた。寧々の誘いを断ったのは、別に事件に関して何も思わなかったからでは無い。厄介そう、めんどくさそうと思ったからだ。だがそんな感情で断ってしまうと、後ろめたさが出てしまう。なので何か新しい情報があったら、教えようと思ったのだ。だが。学校のホームページ、特になし。警察のサイト、知らなかった情報は無し。掲示板、噂か嘘か真か分かりやしない。

「はぁ……」

結局、大した情報は得られなかった。情報も古いもので、もう犯人を捜しているのは寧々だけなのではないだろうか。俺はそんなことを考えながら飴玉を舐めた。口いっぱいに甘みと酸味が広がった。

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