第7話 見え隠れする感情

 次の日、俺は大した情報を得られないまま、学校へ登校した。

「おい!優斗!」

 俺が教室に入ると、俺を視線だけで突き刺し殺そうとしている中、友人の健吾がドスドスと音を立てて俺の前に立った。

「オ・マ・エ!寧々さんと一緒に帰ったって本当か!?」

「えっ、いや、えーっと……」

 だからなんだっていうんだ。……学校のマドンナ的存在の人が二人きりで帰った。事件か。もう遅いかもしれないけど、これ以上は目立ちたくないな……。そんな時だった。

「優斗くん!」

 後ろからこの事態の元凶たる寧々が話しかけてきた。俺はどう対応するべきか決めあぐねていたが、周囲の視線に耐えかねて話しかける。

「なに、寧々」

 俺がそう返答すると、寧々は笑顔で微笑んだ。

「はいっ、ちょっと遅かったけど、おはようございます」

 寧々は昨日の事を露ほども感じさせない嬉しそうな顔で言うが、対する俺は、昨日の事の後ろめたさと、数多の視線に射られている事で、冷や汗をダラダラと流していた。よし、用件があるようだし、早く済ませてもらおう。

「それで、何の用?」

 俺が質問をすると、寧々は、いつも通りの笑みをしながらも、なぜか恥ずかしさを纏って言った。

「あのね、今日、あそこ・・・で一緒にお昼、お、お弁当を食べませんか?」

 恥ずかしそうに言った言葉によって、周囲は氷付けにされた。そんな中俺は動揺しながらも、どうにか回避すべく言葉を連ねる。

「あ、えーと、俺いつも食堂とか購買とかで食べてるから」

「はい、知っていますよ。ですので今日は……お、お弁当、作ってきました」

 その言葉に、周囲は硬直した。そして数秒の後、ざわざわとなり始めた。

「咲蕾さんの弁当……」

「あいつ、咲蕾さんと付き合ってるのか!?」

「……殺らねば」

 周囲の人の多くは、視殺しさつをを試み、その中には物理的交渉に出ようとする者もいた。

「お前、明日の朝日、いや、今日の夕日を見れるかも怪しいな」

 健吾から放たれた言葉を、俺の今後を示唆していた。そんなことになってたまるか。俺は焦りつつも言い訳をした。

「いや、俺と寧々は付き合ってないから」

「じゃあなんでお弁当を作ってもらってるんだ!」

「それは……なんでだ?」

 俺は、それは自分も知りたかったことなので寧々に聞くと、寧々は少しだけ暗い顔をした後「せめてものお礼です」といつもお笑顔で言った。教室はまた地獄絵図と化したが俺は暗い顔が気になり、それどころではなかった。

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