第1章 5話 過去芝居
昔も昔、はるか昔がいつの事を指すかは知らないが、少なくとも人間の一生よりももっと前の事。ある1つの村があったんだとさ。緑は豊かで村の人は皆愛想よく、多少の小競り合い、いがみ合いはあれどなにか重大な事件が起こることもなく、平和な絵がの溢れた村だったそうな。少年もその村の住民の人であり、その美貌から村では子供ながら有名人であり人気物だった。
ある晴れた暖かい日のこと、今日も今日とて朝からその村は平和であり、どの村人も今日もまた何事もなく1日が始まり、終わる。そう思っていた。しかし日常は突然崩れ去る。未来は突然奪われる。
昼過ぎ、10人の村選りすぐりの精鋭達が外に仮に出かける。帰ってくるのは宵ぐらいになると告げる。
皆狩の無事を祈って10人を送り出す。
皆がそれぞれの暮らしに戻る。そして狩の出発から数時間たった時、世界は変わった。
そんなことも知らず、大物を狩ってきた精鋭達が踊れ祝えとどんちゃん騒ぎで帰ってくる。しかしなんとびっくり。そこにいつもの村は無く、あるのは積み上げられた死体とその死の頂に立つ一人の少年の姿。
「ちっ違う・・」
今にも消え去りそうなか細い声で少年は何かを訴えかける。しかし誰もその声を聞かない。聞こうとしない。
村人は一人残らず死んでいるものもその体に傷は無く、まるで眠っているかの様だった。当然村の精鋭達は混乱する。それもそうだろう、帰ると家族全員死んでいるのだ。さらにそれだけに飽き足らず、お隣さんや恩人、友人、恋人に至るまで全て死んでいるのだ。そしてすっかり気が動転した精鋭の中で最も若い少年が、まるで喉を潰されたかの様な声で声を上げる。ふるふると震える手でたった一人生き残っている少年を指差し
「し・・死神だ・・じにがみだぁぁぁぁぁぁ!あっっがっ!」
笑えるよ、村でも人気のありみんなから慕われていた少年が状況1つで話も聞かずに死神扱い。所詮人間関係など飴細工の様なものだ。作り上げるのにはやたらと時間がかかる癖に、崩れるのは一瞬だ。
ー確かにこの惨状の理由は僕だ・・でも・・僕はみんなの事を信頼してたのに・・愛してたのに・・
ーせめて話だけは聞いて欲しかった・・
この世界の脆さ、弱さ、残酷さを知るには幼い少年にはまだ早すぎた。
「ゔぁぁぁぁぁぁぁぅぁぁぁぁ!!」
死神宣言を聞き自分の中で感情の整理ができなくなって他の精鋭達が狂ったかの様に寄ってたかって一人の少年を殺しにくる。
「ゔふっ」
全方向から10本の剣で胴体を串刺しにされた少年は血と涙をその幼い体から溢れ出しながら誓う。
ーもうなにも信じない、愛さない。
少年が気を失うと同時に、精鋭10人の脈も止まる。
数時間か数日か数ヶ月か経ったあと、少年は目を覚ます。異臭の漂う死に囲まれて。その体に傷は無く、むしろいつもより健康そうな体をしている。
不死身の死神の噂はすぐに世界中に行き渡った。
少年は誰にも関わらない為、村の外れにある崖に入り浸りその背に罪を背をいながら今日まで毎日そこから飛び降り、死ぬ事を望んでいた。
めでたしめでたし
おしまい。
「ぜんっっっぜんっっっめでたくないし!!」
突然始まった少年の過去芝居のあまりの救いのなさに少女は叫ぶ。
「そもそも不明様な所が多すぎる!なんで村人が全員死んでてあなただけが生き残っていたのよ!!!」
少女はこの世の騒音の具現化の様な声を出す。
「説明する・・説明するから・・わかったから・・だから黙って・・」
優しさの残り香が、自分の過去を核心に迫らず話そうとしたが、それも失敗の及ぶ。さしずめこの騒音には少年の中の善意も耐えれなかったみたいだ。
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